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2500回記念④ 歴史を彩る音楽会

投稿日:2017年02月26日 09:30

番組2500回記念シリーズの掉尾を飾るのは「歴史を彩る音楽会」。クラシック界を担う若きスター奏者のみなさんが一堂に会して、アンサンブルを組んでくれました。超優秀な奏者たちがひしめく若い世代を代表するような豪華メンバーが勢ぞろい。みなさん、本当に上手いですよね。あのメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲ときたら! あれだけ細部まで彫琢された精妙な演奏はめったに聴けるものではありません。
 メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲は、よく音楽祭などで演奏される名曲です。室内楽というと多くの作曲家が弦楽四重奏の名曲を書いていますが、八重奏が書かれることはまれなこと。弦楽四重奏団2つ分の奏者が必要になりますので、本来演奏機会は限られているのですが、なにしろ曲がとてつもなくすばらしい(これを16歳の年に書いたメンデルスゾーンの早熟ぶりには驚嘆するしかありません)。ですので、弦楽器の名手がたくさん集まる機会があると、せっかくだからこの曲を演奏しようということになります。番組収録中に奏者の方々もおっしゃっていましたが、いつかこのメンバーで全曲演奏するところを聴いてみたいものです。
 ショパンのピアノ協奏曲第1番では、辻井伸行さんのピアノや川瀬賢太郎さんの指揮も加わって、いっそう華やかなアンサンブルがくりひろげられました。本来はピアノとオーケストラのための作品ですが、今回は室内楽編成に編曲してのショパン。こういったピアノ協奏曲を室内楽編成で演奏する試みは19世紀にも行われていました。なるほど、小編成には小編成の魅力があるということに気づかされます。個々の奏者間の対話の要素が強まり、奏者たちの技量の高さがしっかりと伝わってきます。辻井さんの華麗なピアノと川瀬さんのキレのある指揮ぶりのコントラストも絶妙の味わいを生み出していました。

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2500回記念③祝典の音楽会

投稿日:2017年02月19日 09:30

番組2500回記念シリーズの第3回は「祝典の音楽会」。今回の収録は赤坂のサントリーホールで行われました。今でこそクラシック音楽専用のコンサートホールは珍しくありませんが、その草分けが1986年に開館したサントリーホール。その響きの美しさは今でもトップレベルにあり、東京でもっとも盛んにオーケストラのコンサートが開催されているホールでもあります。節目を祝う「第九」にふさわしいコンサートホールといえるでしょう。
 ベートーヴェンの「第九」初演は1824年のこと。初演は大成功を収めたものの、その後は決して盛んに演奏される作品ではありませんでした。むしろ長大で難解な曲として不人気だったといってもよいほどです。しかし、この曲に魅了されたのが少年時代のワーグナー。ワーグナーは「第九」を指揮する夢を抱き、やがてザクセン宮廷劇場の指揮者に就任した際、周囲の猛反対を押し切って「第九」を指揮し、公演を成功に導きました。ワーグナーは「第九」復活の立役者だったんですね。
 その後、ワーグナーはバイロイト祝祭劇場の定礎式でもベートーヴェンの「第九」を指揮し、以来、現代に至るまで新しいホールのこけら落としや音楽祭のハイライトなど、特別な機会に「第九」が上演されるようになりました。日本では暮れの風物詩として独自の定着を果たしていますね。
 今回は「第九」の第4楽章「歓喜の歌」に最先端のプロジェクション・マッピングが加わって、音楽的にも視覚的にもドラマティックな「第九」が実現しました。バート・クレサさんは、サントリーホールのパイプオルガンに着目して、オルガンの造形を生かしながら、そこに草木や蔓、花、ステンドグラス、オペラ劇場、抽象的な幾何学模様など、多彩なイメージを投影していました。音楽と映像が有機的に結び付いていたのではないでしょうか。

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2500回記念②ウィーンのスーパースター軍団と音楽家たち

投稿日:2017年02月12日 09:30

4週にわたる番組2500回記念シリーズの第2弾は「ウィーンのスーパースター軍団と音楽家たち」。7名のスター奏者たちが集まったザ・フィルハーモニクスをスタジオにお招きしました。ジャンルの壁を軽々と飛び越えて、楽しい演奏を披露してくれました。
 歌劇「こうもり」序曲では、演奏の途中から違う曲が混入してくるなど、茶目っ気もたっぷり。こういった遊び心はさすがウィーン・フィルのメンバーといった感じがしますね。
 ザ・フィルハーモニクスはウィーン・フィルのメンバーを中心に結成されたアンサンブルです。ただし、チェロのシュテファン・コンツさんは、2010年にウィーン・フィルからベルリン・フィルへと移籍しています。よく世界の二大オーケストラとして挙げられる両オーケストラですが、そのキャラクターは対照的。番組内でコンツさんは「ウィーン・フィルはロールスロイス、ベルリン・フィルはランボルギーニ」とたとえていました。どちらのクルマにも乗ったことはありませんが、イメージはなんとなく伝わってきます。ウィーン・フィルのサウンドは豊麗で潤いがあり、ベルリン・フィルは緻密でパワフルとでもいいましょうか。レパートリーからも、クラシカルなウィーン・フィル、モダンなベルリン・フィルといった印象があります。
 ウィーン・フィルのメンバーはウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーでもあります。つまり、日々オペラを演奏するのが彼らの職務。ウィーン国立歌劇場では毎晩のようにオペラやバレエが上演されていますので、常時劇場のピットに入って演奏し、その合間に、ウィーン・フィルとしてコンサートを開いたり、ツアーに出かけたりしているわけです。さらにそれに加えて、メンバーは室内楽やソロ活動を行っています。
 大変な忙しさのはずですが、でも、いつも楽しそうに演奏しているのはウィーン・フィルでもザ・フィルハーモニクスでも同じ。演奏する姿から音楽への尽きるのことのない愛情が伝わってきます。

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2500回記念① ピアノ界のスーパースター ラン・ランと音楽家たち

投稿日:2017年02月05日 09:30

4週にわたる番組2500回記念シリーズの第1弾は「ピアノ界のスーパースター ラン・ランと音楽家たち」。ラン・ランが幼少期の体験やピアニストになるまでの思い出を語ってくれましたが、どれも興味深いものばかりでした。演奏も実にエキサイティングでしたね。
 少年時代から厳しい練習を積んできたラン・ランのようなピアニストでも、やはりマンガやアニメが大好きな普通の子供と同じ側面を持っていたという話には、ほっとさせられます。「トムとジェリー」の演奏シーンにすっかり魅了されて音楽が好きになったというラン・ランは、自伝でこんなふうに述べています。
「ピアノを弾くと、僕はただの少年ではなく、特別な何かになった。孫悟空やトランスフォーマーやトムとジェリーのように、ピアノは僕をもっと幸福な世界へと連れて行ってくれた」(『奇跡のピアニスト郎朗(ラン・ラン)自伝』より)。
 成熟したラン・ランの現在の姿を見ても、どこかに少年のような音楽への喜びを持ち続けているのではないかという気がしてなりません。
 中国で「勝利第一主義」を植え付けられたラン・ランは、アメリカに渡って価値観の転換を迫られます。カーティス音楽院の名教師ゲイリー・グラフマンは、「すべてのコンクールを制覇したい」と語るラン・ランに対して、「もうコンクールに出場する必要がない」と諭します。音楽はスポーツ競技のような順位を争うものではなく、人と心を通い合わせる詩のようなもの。そう教えるグラフマンとの出会いが、音楽家ラン・ランの重要な第一歩を後押ししたといえるでしょう。
 ピアニストで指揮者のエッシェンバッハとの出会いもラン・ランに大きな影響を与えました。エッシェンバッハからラヴィニア音楽祭のオーディションに招かれたラン・ランは、求められるまま次々と演奏を続け、当初20分間の約束が2時間にもなってしまったといいます。時を忘れてラン・ランの演奏に耳を傾ける名匠エッシェンバッハ。想像するだけでも、すごい場面ですよね。

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