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ユンディ・リによるショパンの音楽会

投稿日:2015年12月27日 09:30

 ユンディ・リがショパン国際ピアノコンクールで第1位を獲得したのは2000年のこと。史上最年少での優勝はセンセーションを巻き起こしました。それから15年が経った今年、第17回ショパン国際ピアノコンクールでは、ユンディが史上最年少で審査員を務めています。審査員席にユンディがいるというのは、なんだか不思議な感じもしますよね。

 5年に1度開催されるショパン国際ピアノコンクールは、ほかのどのコンクールよりも大きな注目を集める特別な存在です。なぜそうなのかといえば、やはりすぐれた優勝者を輩出しているからでしょう。特に第6回(1960年)でマウリツィオ・ポリーニ、第7回(1965年)でマルタ・アルゲリッチという歴史に残る偉大なピアニストを世に出したことは、コンクールにとっての大きな栄誉といえます。

 そんなショパン国際ピアノコンクールも、1990年代には苦難の時代を迎えました。1990年と1995年の2回のコンクールで、続けて第1位を出すことができなかったのです。コンクールでは、第1位にふさわしい才能がいなかった場合に、このように第1位を空席として、第2位を最高位とすることがよくあります。コンクールは若い才能を発見できるからこそ、その権威を保てるもの。2回続けて第1位を出せなかったショパン国際ピアノコンクールは、これからどうなってしまうのか。多くの人がコンクールの行方を案じました。

 そして、2000年に15年ぶりとなる第1位を獲得したのが、ユンディでした。15年ぶりの第1位という印象が強烈だったせいでしょうか、近年のショパン国際ピアノコンクールの優勝者というと、いまだにまっさきにユンディの名を思い出してしまいます。

 本日はユンディと五嶋龍さんの共演が実現したのもうれしかったですね。名ヴァイオリニスト、ミルシテインが編曲した、ヴァイオリンとピアノ版のノクターン第20番(遺作)。原曲のピアノ独奏とは一味違う、清新なロマンティシズムが伝わってきました。

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プリンセスの音楽会

投稿日:2015年12月20日 09:30

 今週はディズニー映画を彩る名曲をたっぷりと聴くことができました。ディズニープリンセスの大メドレーがありましたが、改めてディズニーは名曲の宝庫だと実感します。五嶋龍さん、小林美樹さん、塚越慎子さんをはじめ、大勢のアーティストたちがすてきな演奏を聴かせてくれました。特に印象に残ったのはトロンボーンの中川英二郎さん。トロンボーンって、あんなにまろやかで優しい音色が出せるんですね。

 来年、2016年にウォルト・ディズニーは没後50年を迎えます。映像と音楽のコラボレーションに関して、ウォルト・ディズニーほどの先駆者はいません。番組中でも紹介された映画「ファンタジア」が公開されたのは1940年のこと。もう75年も前の作品です。

 映画「ファンタジア」では、アニメーションとクラシックの名曲を高いレベルで融合させて、それまでにない芸術としての鑑賞に耐える映像作品が生み出されました。とりわけ有名なのはデュカス作曲「魔法使いの弟子」の場面でしょうか。ミッキーマウスが見習い魔法使いに扮して出演して、魔法の力でほうきに水汲みをさせようとしますが、魔法の止め方がわからずに水浸しになって一大事に。ユーモラスなストーリーは原曲に添ったものです。

 音楽と映像のコラボレーションを重視するウォルトの姿勢は、その後のディズニー作品にも引き継がれています。1959年のアニメ映画「眠れる森の美女」では、同じ童話を題材としたチャイコフスキーのバレエ音楽が用いられました。主題歌となったオーロラ姫の「いつか夢で」は、このチャイコフスキーのバレエに登場する「ワルツ」に歌詞を添えたものですが、もしかするとディズニー名曲として原曲以上に広く親しまれているかもしれませんね。

 ちなみにこの曲は、2014年公開の映画「マレフィセント」でも使われていました。こちらは「眠れる森の美女」のアップデート・バージョンとでもいいましょうか、原作では悪役だった魔女が主役になっています。同じワルツのメロディが、ダークな雰囲気でアレンジされていたのが見事でした。

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フィギュアスケートの音楽会

投稿日:2015年12月13日 09:30

 毎年、フィギュアスケートの新シーズンが開幕すると、今年はどんな音楽が使われるのだろうかと気になります。フィギュアをきっかけに曲を好きになるというケースもよくありますよね。

 今シーズン、特に注目していたのは浅田真央選手がフリーで使用している「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」。イタリアの代表的な作曲家プッチーニが書いたオペラ「蝶々夫人」は、明治時代の長崎を舞台にしています。名家の生まれながら、15歳にして芸者となってしまった蝶々さんは、アメリカ海軍士官ピンカートンと結婚します。幸せいっぱいの蝶々さん。ところがピンカートンにしてみれば、蝶々さんは現地妻でしかありません。日本で結婚式まで挙げたのに、赴任期間が終わるとアメリカにいる本当の婚約者のもとへとさっさと帰ってしまいます。

 捨てられたにもかかわらず、蝶々さんはピンカートンを信じて夫の帰りを待ちます。アリア「ある晴れた日に」で歌われるのは、そんな蝶々さんの純粋な思い。浅田真央選手の演技では、序奏が鳴りだした瞬間から、すでに蝶々さんの一途な思いが表情にあらわれていたように感じます。

 それにしてもピンカートンって、ひどい男ですよね。プッチーニのオペラには、こんなふうにヒロインがかわいそうな目にあう話がたくさんあります。蝶々さんも最後はピンカートンとの間に生まれた子に別れを告げて、切腹してしまいます(劇場だとここで啜り泣きが漏れます)。

 「蝶々夫人」を書いた後、現実のプッチーニの身辺にも悲劇が訪れます。プッチーニの妻エルヴィーラが、小間使の少女とプッチーニとの不倫を疑ったのです。嫉妬深いエルヴィーラに追いつめられて、少女は自らの命を絶ってしまいました。事件は法廷に持ち込まれ、少女は無実だったという判決が下されます。プッチーニはこの事件に傷つき、それまでに書いてきた「かわいそうな少女の悲劇」を書けなくなってしまいました……。

 ところで、フィギュアスケートでクラシックの名曲を使うときは、演技に合わせて曲の一部をカットしたり、つなぎ合わせたりすることが一般的です。今回は演技映像に合わせての生演奏ということで、そういったカットも含めて忠実に再現されていました。映像と演奏がぴたりと同期していたのがすごかったですね。

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超絶技巧の音楽会

投稿日:2015年12月06日 09:30

 超絶技巧って理屈抜きの感動がありますよね。田中彩子さんが歌ってくれたモーツァルトの「夜の女王のアリア」では、どこから出てくるのか思うような高音が飛び出します。軽快で、ユーモラスで、でも迫力がある。爽快でした。

 このアリアが登場するモーツァルトのオペラ「魔笛」は、ほかのオペラとは少し違ったテイストで作曲されています。田中さんのお話でも少し触れられていたように、当時のウィーンでは宮廷劇場がオペラの上演拠点となっていました。しかしその一方で、民衆のための劇場でも歌芝居などが上演され、次第に人気を高めていました。

 とりわけ才人ぶりを発揮していたのが、興行主兼台本作家兼俳優兼歌手のシカネーダー。シカネーダーは自分たちの一座のために、モーツァルトに「魔笛」を書いてもらったのです。おとぎ話や魔法が題材に選ばれているのも、民衆劇のスタイルを踏襲しているからなのでしょう。そして、歌手が超絶技巧を発揮する「夜の女王のアリア」は、お客さんを大いに沸かせる見せ場だったにちがいありません。

 「魔笛」が民衆のためのオペラであったのと同様に、一噌幸弘さんが復刻した田楽笛も民衆のための楽器だったといいます。「空乱12拍子」では、アクロバティックな超絶技巧が連発されました。こちらもエキサイティングでしたよね。なんといっても複数の笛を同時に吹くというのが強烈。この曲は一噌さんのオリジナル作品ですが、きっとかつての田楽笛にも名手がいて、「夜の女王のアリア」と同じように聴く人を興奮させたのではないでしょうか。

 今回、東京シティ・フィルを指揮した沼尻竜典さんは、指揮のみならずピアノや作曲でも活躍されています。五嶋龍さんたっての希望で、沼尻さんのピアノとの共演が実現しました。ヴィエニャフスキの「レジェンデ」、心に響く名演でした。

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