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特殊筋肉と音楽家たち

投稿日:2015年11月29日 09:30

 今回の「題名のない音楽会」は「特殊筋肉と音楽家たち」。番組タイトルを見て「特殊筋肉」ってなんのことだろうと思った方も多かったのでは。

 ピアニストの反田恭平さんが見せてくれた、ラフマニノフ筋、ショパン筋、ベートーヴェン筋……。これは反田さんの命名で、本当にそんな名前の筋肉があるわけではありませんが、音楽家にはアスリートのような一面があることに気づかされました。

 反田さんが弾いてくれた、ビゼー作曲、ホロヴィッツ編曲の「カルメン幻想曲」、すさまじかったですよね。華麗なテクニックが存分に発揮されていました。編曲者のホロヴィッツは、20世紀を代表する伝説的な大ピアニストです。しばしばリサイタルのアンコールでこの曲を披露して、聴衆を熱狂させました。ビゼーのオペラ「カルメン」に登場する親しみやすいメロディが、超絶技巧によってこれでもかというくらい華やかに変奏されています。

 実は反田さんが弾いていたピアノは、そのホロヴィッツが愛用していたというニューヨーク・スタインウェイの名器。ホロヴィッツは独特のきらびやかなタッチを実現するために、楽器には強いこだわりを持っていました。ホロヴィッツのピアノの鍵盤は非常に軽かったことで知られています。軽いということは、わずかなタッチの差に敏感に反応してしまい、それだけコントロールが難しいということ。反田さんは精妙なタッチでホロヴィッツのピアノを操り、ホロヴィッツその人を思わせるような輝かしい音色を生み出していました。

 上野耕平さんが見せてくれた「循環呼吸」にも驚きました。ストローとコップで実演してくれましたが、その気になればいつまででも息を吐き続けることができそうな余裕っぷり。頬にためた空気を出すのと同時に、鼻から空気を吸い込むんだそうですが、試しにストローとコップでやってみても、どうにもできそうにありません。

 五嶋龍さん、循環呼吸が少しできていましたよね? これにもびっくり。ヴァイオリニストなのに、いったいいつ練習したんでしょう……。

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ゲーム音楽史の音楽会

投稿日:2015年11月22日 09:30

 ゲームをお好きな方なら、きっと今日の演奏を聴いて勝手に指が動き出してしまったのではないでしょうか。

 今年30周年を迎えた「スーパーマリオブラザーズ」。名作ですよねえ。シエナ・ウインド・オーケストラの演奏を聴きながらファミコンのプレイ画面を見ると、懐かしさで胸がいっぱいになります。ああ、ここで大ジャンプしたよなあ……と。

 そして、忘れることのできないゲーム音楽といえば、もちろん「ファイナルファンタジー」に登場した名曲の数々。「マンボdeチョコボ」のトロンボーンのソロが熱かった!

 作曲者の植松伸夫さんのお話にあったように、当時はハードウェアの制限で同時発音数が限られていたんですね。かつて「ピコピコ音」などといわれたサウンドが、今や壮大なオーケストラのサウンドまで再現できるようになったのですから、技術の進化も並大抵ではありません。

 意外な気もしますが、五嶋龍さんはゲーム好きなんだそうです。今回の番組収録に先立ってお好きなゲームをいくつか挙げていただいたところ、海外ゲームの人気作に交じって挙げられていたのが「ゼルダの伝説」。そこで、「ゼルダの伝説」のメインテーマが演奏されることになりました。

 よもや、あの名曲を五嶋龍さんのヴァイオリンで聴けるとは! 独奏ヴァイオリンとブラスバンドの共演という点でもユニークなサウンドが生まれていました。ヴァイオリンとオーケストラの協奏曲はたくさんありますが、ヴァイオリンとブラスバンドという組合せはほとんどありません。

 パワフルで厚みのあるブラスバンドをバックに、孤軍奮闘するヴァイオリニストの姿は、「ゼルダの伝説」の主人公の姿にどこか重なります。まるでヴァイオリンの弓が、剣のように見えませんでしたか。

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吹奏楽部の音楽会

投稿日:2015年11月15日 09:30

 吹奏楽で聴くレスピーギの「ローマの祭」。迫力がありましたよね。プロが演奏すると、こんなに精妙なサウンドが生まれてくるのかという驚きがありました。

 本来、「ローマの祭」は大編成のオーケストラのために書かれた交響詩ですが、こうして吹奏楽で聴いてもまったく違和感がありません。クラシックの名曲を吹奏楽編曲で演奏する例は珍しくありませんが、これほどぴたりとハマった編曲はなかなかないのでは? 派手な演奏効果があって、しかも曲がいい。吹奏楽コンクールでの人気の高さにもうなずけます。

 レスピーギには「ローマの松」「ローマの噴水」という交響詩もあります。こちらも吹奏楽版でも知られる人気曲ですよね。「ローマの祭」と合わせて「ローマ三部作」と呼ばれています。

 レスピーギは1879年、イタリアのボローニャに生まれました。ローマの生まれじゃなかったんですね。幼少時からヴァイオリンとピアノを学び(どちらもかなり達者だったとか)、ロシアにわたって劇場でヴァイオリン奏者を務めるかたわら、管弦楽法の大家として知られるリムスキー=コルサコフに作曲を師事しました。レスピーギの華麗なオーケストレーションは師匠譲りなんでしょう。

 1913年からはローマで作曲の教授を務めるようになり、この地で「ローマ三部作」を着想しました。

 レスピーギは当時ほとんど無視されていたイタリアの古楽に深い関心を寄せていました。そして、古い音楽を素材に用いて自作を作曲することがしばしばありました。「リュートのための古風な舞曲とアリア」は、16~17世紀に書かれたリュート曲を20世紀のオーケストラ向けに編曲した作品ですし、組曲「鳥」もやはり古楽を素材に使っています。これらの作品には編曲者としてのレスピーギの手腕が発揮されています。

 そんなレスピーギが今も生きていて、自分の作品が吹奏楽用に編曲されて日本で人気を呼んでいると知ったら? きっとずいぶん愉快に感じたのではないでしょうか。

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第25回出光音楽賞受賞者ガラコンサート

投稿日:2015年11月08日 09:30

 今回は第25回出光音楽賞受賞者ガラコンサートの模様が放送されました。出光音楽賞といえば、将来有望な若手音楽家を表彰する賞として、クラシック音楽界ではだれもが知る存在です。
 今回の受賞者は3名。ヴァイオリンの周防亮介さんに加えて、三味線の本條秀慈郎さん、バンドネオンの三浦一馬さんといった少し珍しい楽器の演奏家が選ばれているのが目を引きます。
 特にバンドネオン。一見、アコーディオンに似ているのですが、番組中でも解説されていたように、不思議な配列のボタンによって音を出す仕掛けになっています。ドイツ生まれの楽器で、アルゼンチンに渡ってタンゴの楽器として広く使われるようになりました。日本では90年代にアルゼンチンのバンドネオン奏者、ピアソラの音楽がブームになりましたので、そのときにこの楽器を初めて知ったという方も多いのでは?
 そのピアソラに続く、現代のバンドネオンの巨匠が、三浦一馬さんの師ネストル・マルコーニ。三浦さんは16歳のときにマルコーニの生の演奏を聴いて衝撃を受け、終演後にマルコーニを探して打上げ会場のお寿司屋さんにまで押しかけて、その場で演奏を聴いてもらったそうです。晴れ舞台で演奏する師匠のバンドネオン協奏曲、カッコよかったですよね。
 三味線の本條秀慈郎さんが演奏されていたのは大家百子作曲の「薺(なずな)舞 ―三味線とオーケストラのための」。こちらも現代の作品です。日本の伝統楽器と西洋音楽との接点から、新しい音楽世界が生み出されていました。
 唯一、伝統的なクラシックの名曲を弾いたのがヴァイオリンの周防亮介さん。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲から第1楽章が演奏されました。若さに似合わず風格の漂うチャイコフスキーとでも言いましょうか。堂々たる名演でした。会場から「ブラボー!」の声があがったのも納得。将来が楽しみな逸材です。

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