今週はヴァイオリニストの廣津留すみれさんおすすめの「新しいクラシック音楽」をお届けしました。クラシックというと、どうしても何百年も前の作曲家の名前が思い出されますが、現在も多くの作曲家たちが新作を生み出しています。
最初に演奏されたのは、アイスランドの作曲家オーラヴル・アルナルズによるNear Light(ニア・ライト)。抒情的な曲想から淡いノスタルジーが漂ってきました。曲の終わり方も、ふっと宙に消えるようで余韻が残ります。アルナルズはハードコア/メタルバンドのドラマーとして活躍した経歴を持ち、ポスト・クラシカルの旗手とみなされている音楽家です。伝統楽器によるアコースティックなサウンドにエレクトロニカの手法を融合させたポスト・クラシカルは、近年の一大潮流となっています。クラシックの老舗レーベルであるドイツ・グラモフォンがアルナルズらポスト・クラシカルのアーティストたちと契約していることからも、その注目度の高さがわかります。
2曲目はアメリカの作曲家フィリップ・グラスによるEchorus(エコラス)。フィリップ・グラスは音楽界のレジェンドといえるような存在です。ミニマル・ミュージックの分野で先駆的な役割を果たし、クラシックのみならずロックやポップスの分野においても続く世代に多大な影響を与えています。Echorusという曲名はecho(エコー、こだま)に由来するのだとか。廣津留さんと和久井映見さんのおふたりが息の合ったところを見せてくれました。ゆったりとした反復的な楽想が静かな高揚感を生み出していました。
おしまいはアメリカのジェレミー・キトルによるThe Boxing Reels(ザ・ボクシング・リールズ)。リールとはスコットランド/アイルランドの伝統舞曲の一種。カントリー風、フォーク風のテイストがあり、楽器編成も自由なら曲の長さも自由という楽曲です。開放的な気分で楽しむことができました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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