今週はいま熱い注目を集める16歳のトランペット奏者、児玉隼人さんをお招きしました。昨年5月に「未来への扉!ニュースターの音楽会」でご紹介した児玉隼人さんですが、さらなる飛躍を遂げて、活動の場が一段と広がっています。2024年の第39回日本管打楽器コンクールトランペット部門では全部門を通じて史上最年少で優勝を飾り、今年はソロ・アルバムをリリース。現在はドイツに渡り、世界的トランペット奏者であるラインホルト・フリードリヒに師事。先生の家に住み込みで学んでいるというお話にもびっくりしましたが、その家が築500年以上のお城のような住居だといいますから驚きます。
今回はトランペットのソロ、チェロとハープとの共演、金管五重奏と多彩な編成による楽曲をお届けしました。
1曲目はジェルヴェーズ作曲、モーリス・アンドレ編曲による「アルマンド」。曲名は「ドイツ風」の意。バロック期の組曲によく使われた舞曲を指しています。澄んだ明るい音色から古雅な雰囲気が伝わってきました。
2曲目はテオ・シャルリエの「36の超絶技巧練習曲」より第2番。愁いを帯びた曲想がノスタルジーを喚起します。「超絶技巧練習曲」の題にもかかわらず、技巧を感じさせない自然体の音楽になっているのがすばらしいと思いました。
3曲目のラフマニノフ「ヴォカリーズ」の原曲は歌曲です。ヴォカリーズとは歌詞を用いない母音唱法のこと。さまざまな楽器のために編曲されている名曲ですが、今回はトランペット、チェロ、ハープという珍しい編成で。それぞれの楽器の持ち味が発揮された陰影豊かなラフマニノフでした。
最後のアーノルドの金管五重奏曲第1番は、金管五重奏の定番曲。全曲のフィナーレである第3楽章を、10代の仲間たちと共演してくれました。みんな本当にうまい! 途中の「ヒソヒソ話」の部分がおもしろいですよね。小気味よく軽快で、金管五重奏ならではの爽快さがありました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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