今週は反田恭平さん設立のジャパン・ナショナル・オーケストラが本拠を置く奈良よりお届けしました。会場は奈良県文化会館国際ホール。こうしてお客さんの入った会場での公開収録は久しぶりでしたが、やはり熱気があっていいものですね。
反田さんが音楽家を目指すきっかけとなったのが、当番組の指揮者体験企画「振ってみまSHOW!」。当時12歳の反田さんがベートーヴェンの交響曲第7番を指揮している映像がありましたが、まさに現在の反田さんの姿を予告するかのようで、感慨深いものがあります。今回はそんな名物企画が一日限りの復活。9歳の柚木心琴さん、13歳の永原聖恵さんがブラームスのハンガリー舞曲第5番の指揮に挑戦してくれました。おふたりとも堂々たる指揮ぶりでオーケストラをリード。指揮を終えた心琴さんの「楽しかったです」の一言がめちゃくちゃかわいかったですよね。
最後に反田さんが指揮をしたのは、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」より第3楽章。精鋭ぞろいのジャパン・ナショナル・オーケストラだけに、とてもみずみずしく豊麗なサウンドが生み出されていました。チェロ以外はみんな立って演奏するスタイルで、視覚的にもいっそうの躍動感が伝わってきます。
この「プラハ」交響曲は反田さんが「元気をもらえる作品」と話していたように、モーツァルトの交響曲のなかでもとりわけ高揚感にあふれた特別な傑作だと思います。作曲当時、プラハの街ではモーツァルト旋風が巻き起こっていました。オペラ「フィガロの結婚」がプラハでセンセーショナルな成功を収め、モーツァルトはこの地で大歓迎を受けます。その際に開かれたコンサートで初演されたのが「プラハ」交響曲。輝かしく幸福感にあふれた曲想は、絶頂期のモーツァルトの意気揚々とした姿を思い起こさせます。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)