6月といえば「ジューン・ブライド」。古くから欧米では6月に結婚すると幸せになれるという言い伝えがあります。一説によれば、6月は結婚と女性の守護神とされるジュノー(=ギリシア神話でのヘラ、主神ゼウスの妻)にちなむ月であることから、そのように言われるようになったそうです。今回はウェディングをテーマに、一流音楽家のみなさんにドアの向こうの仮想現実のなかで演奏していただきました。
オルガニストの石丸由佳さんが演奏したのはメンデルスゾーンの「結婚行進曲」。よく耳にする有名な「結婚行進曲」には2種類あります。ひとつがこちらのメンデルスゾーン。晴れやかな曲想で有名ですよね。シェイクスピアの「夏の夜の夢」の上演に際して作曲されました。もうひとつはワーグナーがオペラ「ローエングリン」のために書いた「結婚行進曲」。こちらはゆっくりと歩くような曲調で、新郎新婦入場の場面でよく使われます。実用性が高いのがワーグナー、気分が盛り上がるのがメンデルスゾーンと言えるでしょうか。
ピアニストの萩原麻未さんとヴァイオリニストの成田達輝さんは「ハウルの動く城」より「人生のメリーゴーランド」を演奏してくれました。著名音楽家同士のカップルとして話題を呼んだおふたりですが、プロポーズにそんなロマンチックな逸話があったとは。本当に素敵なおふたりだと改めて感じます。
ソプラノの鈴木玲奈さんが歌ったのは讃美歌429番「あいの御神よ」。清澄な歌声は軽やかでいて厳かでもあり、軽井沢高原教会にぴったりの雰囲気だったと思います。緑に囲まれた外観といい、木の温もりが感じられる内部の空間といい、本当に美しい場所で、讃美歌に心が洗われるようでした。
スイスを拠点にするチェリストの新倉瞳さんはアルプス湖畔を舞台にユダヤの伝承音楽をルーツに持つ「ウェディング・ホラ」を演奏してくれました。クラリネットはコハーン・イシュトヴァーンさん、アコーディオンは佐藤芳明さん。クラシックとは一味違った濃厚な味わいがありましたね。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)