今週はセカンド奏者のみなさんをお招きして、ファースト奏者を支える献身ぶりについてお話しいただきました。同じ楽器の奏者でもファーストとセカンドではずいぶんと役割が違うものですね。
一般的なオーケストラでは、同じフルート奏者であってもファーストは常にファーストのパートを吹き、セカンド奏者は常にセカンドのパートを吹きます。ファーストの人が定年や移籍で楽団を去ったからと言って、セカンドの人がファーストに昇格するわけではありません。入団オーディションの時点で、ファーストはファーストとして、セカンドはセカンドとして別々に募集されるのが普通です。たとえ経験の少ない若い奏者であっても、ファーストとして採用されれば最初からファーストです。それくらい立場がはっきり違います。ファーストとセカンドでは奏者のメンタリティもずいぶん違っていることが番組からよく伝わってきたと思います。
オーケストラの木管楽器で特徴的なのは、楽器の持ち替えがあるところでしょう。たとえばフルートであれば、ファースト奏者はフルートのみを吹きますが、セカンド奏者はピッコロに持ち替えることがあります。ピッコロはひときわ甲高い音を出しますので、どんな場面でも目立つ楽器。難波薫さんが持ち替えを実演してくれましたが、普段は目立たない奏者がいきなり大活躍することになります。
オーボエの場合はセカンド奏者がイングリッシュホルンも吹くことになります。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第2楽章に登場する有名なメロディを演奏するのはイングリッシュホルン。普段はサポート役のセカンド奏者が、一気に主役に躍り出ることもあるのです。
最後のセカンド奏者だけで演奏するベートーヴェンの交響曲第7番は新鮮でした。ファースト不在でもこれはまぎれもなくベートーヴェンの7番。いつもは表から見ている作品を裏側からのぞくようなおもしろさがありました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)