今週は角野隼斗さんと、その師であるジャン=マルク・ルイサダさんの連弾をお楽しみいただきました。
ルイサダさんはフランスを代表するピアニストのひとり。長年にわたって世界を舞台に活躍を続ける大家ですが、話しぶりはチャーミングで、気さくな人柄が伝わってきます。かねてより日本との縁は深く、テレビ番組でピアノレッスンの講師を務めたこともあります。パリ留学中の角野さんがルイサダさんのリサイタルを聴いて感銘を受けたことをきっかけに、ふたりの師弟関係が始まりました。今回は角野さんの熱望により、師弟共演が実現。こういった有名ピアニスト同士の連弾を聴く機会は決して多くありません。信頼関係で結ばれたふたりによる、親密な音の対話がくりひろげられていました。
フォーレの組曲「ドリー」は連弾の定番曲。タイトルのドリーとは、作曲者が親しくしていたバルダック家の娘エレーヌの愛称です。フォーレはエレーヌの誕生祝いとして毎年1曲ずつを贈り、後にこれらの曲を中心に組曲「ドリー」が編まれました。「子守歌」は組曲中、最初に書かれた1曲です。優しく、慈しみに満ちた音楽でした。
ラヴェルの「マ・メール・ロア」はオーケストラ版でも広く知られる組曲です。童話集が題材になっており、今回は第1曲「眠りの森の美女のパヴァーヌ」と、第3曲「パゴダの女王レドロネット」が演奏されました。「眠りの森の美女」の物語はペローの童話やディズニー映画でよく知られています。淡いノスタルジーが漂っていました。「パゴダの女王レドロネット」で題材となっているのは「緑の蛇」という童話。こちらは入手容易な邦訳がないため、日本ではほとんど知られていませんが、物語の一場面に中国風の人形(パゴダ人形)が主人公をもてなす場面があります。曲調が東洋風なのはそのため。ユーモアがあって、幻想的でありつつも、きらびやか。角野さんとルイサダさんの息がぴたりと合っていました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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