今年1月と2月に4週にわたって放送した「山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会」は、第62回ギャラクシー賞優秀賞と第51回放送文化基金賞エンターテインメント部門最優秀賞を受賞しました。今週よりアンコール放送といたしまして、本企画を特別編集版で2週に凝縮してお送りいたします。
未来オーケストラのオーディションには書類選考を経た104人が参加しました。山田さんは長時間のオーディションに立ち会った結果、「落とす人が見当たらなかった」と言い、全員を合格させます。
104人ともなれば、オーケストラとしてもかなりの大編成。全員が参加できる曲が必要になりますが、パートによって人数はばらばら。そこで、通常の第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンに加えて第3ヴァイオリンを設けるなど、このオーケストラのための特別な編曲が用意されました。
全体練習にあたっては、事前にメンバー全員に山田さんから手紙が送られています。そこにはメンバーへのリクエストがいくつか記されていました。たとえば、指揮者を「先生」と呼ばないこと。教える側と教わる側の一方的な関係を築くのではなく、ともに音楽を楽しむことを大切にしたいというのです。
練習中には、譜面台にメンバーそれぞれのニックネームが貼られ、山田さんは盛んにメンバーたちとのコミュニケーションをとっていました。「今日どこから来たん?」とメンバーに尋ね、地元にまで届く音を求める場面は印象的。音量がほしいのではなく、音にメッセージ性がほしいという難しいリクエストでしたが、子どもたちはそれぞれに反応して、生き生きとした表情を持った音を返してくれます。
指揮棒に合わせて拍手をする練習をした後の、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」もおもしろかったですね。山田さんの自在の棒にぴたりとメンバーがついてきて、みんながひとつになっている様子が伝わってきました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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