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おとぎ話から生まれたクラシックの音楽会

投稿日:2024年06月22日 10:30

 クラシック音楽の世界にはおとぎ話を題材とした名曲がたくさんあります。今週は「シンデレラ」「人魚姫」「美女と野獣」から生まれた名曲をお届けしました。
 最初の曲はプロコフィエフの「シンデレラ」から「真夜中」と「シンデレラのワルツ」。「シンデレラ・ストーリー」という言葉があるように、この物語には華やかな雰囲気がありますが、プロコフィエフの音楽には独特の緊迫感があります。不安と期待が入り混じった主人公の複雑な心情を表現したかったのでしょう。ちなみに「シンデレラ」を題材とした有名曲には、ほかにロッシーニのオペラ「チェネレントラ」もあります。こちらにはカボチャの馬車やガラスの靴は出てこないのですが、ストーリーの根幹は同じです。
 ドヴォルザークのオペラ「ルサルカ」は水の精ルサルカと王子の悲恋を描いた物語。ストーリー展開はアンデルセンの「人魚姫」とほぼ同じで、人間の王子に恋をしたルサルカが、魔法の力を借りて人間に姿を変えます。ただし、人間の姿になるには声を失う代償が伴います。オペラなのに主役がいったん声を失う設定になっているのは、なかなか大胆ですよね。このオペラ随一の名曲「月に寄せる歌」は、声を失う前のルサルカが歌います。ほかに「人魚姫」を題材とした曲には、ツェムリンスキー作曲の交響詩「人魚姫」もあります。こちらは大オーケストラで演奏される後期ロマン派スタイルの作品です。
 最後に演奏されたのは、ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」より「美女と野獣の対話」。ラヴェルは子供の世界をこよくなく愛した作曲家でした。組曲「マ・メール・ロワ」では、ひとつの組曲のなかに「眠れる森の美女」「美女と野獣」「親指小僧」「緑の蛇」といった物語が描かれています。美女の役をクラリネットが、野獣の役をコントラファゴットが担うといったように、この組曲ではラヴェルの巧みなオーケストレーションが聴きどころになっています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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