• mixiチェック

みんな大好き!カプースチンの音楽会

投稿日:2023年06月10日 10:30

今年2月に放送した「辻井伸行が挑むカプースチンの音楽会」に続き、今回はカプースチン企画の第2弾「みんな大好き!カプースチンの音楽会」をお届けいたしました。ニコライ・カプースチン(1937~2020)はウクライナ出身の作曲家。一見、ジャズのような作風ですが、アドリブの要素はなく、すべての音が楽譜に記されています。本人はあるインタビューで「私が興味をひかれるのはクラシックの形式とジャズのイディオムの融合だ」と語っていました。
 カプースチン自身がピアニストでしたので、作品にはやはりピアノ曲が多いのですが、さまざまな楽器のための室内楽曲や協奏曲も残されています。今回、チェロの宮田大さんが演奏してくれたのは「ブルレスク」と「エレジー」の2曲。「ブルレスク」とは「ふざけた」「いたずらっぽい」という意味。コミカルな要素とシリアスな要素が一体となった曲に用いられる題です。宮田さんは「仲良しなふたりのケンカ」をイメージしていると語っていましたが、まさにそんな相反する要素が同居しているのが「ブルレスク」。カッコいい曲でしたよね。
 「エレジー」は「哀歌」という意味で、哀悼の音楽、悲しみの音楽を指しています。チェロのための「エレジー」というと、フランスの作曲家フォーレの名曲がまっさきに思い出されますが、カプースチンの「エレジー」はフォーレのように慟哭するのではなく、しみじみと過去を振り返るような趣を醸し出しています。
 一方、上野耕平さんはサクソフォン四重奏で聴くカプースチンという新しい世界へと誘ってくれました。「8つの演奏会用エチュード」より第1曲「プレリュード」、「24の前奏曲」より第9番、いずれもピアノ曲が原曲ですが、ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテットの演奏で聴くと、もともとサクソフォンのために書かれたのではないかと錯覚してしまいそうになります。原曲の切れ味はそのままに、サクソフォンの柔らかく豊かな音色を楽しませてくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック
コメントはこちらからどうぞ

ニックネーム
コメント

※必ず注意事項をお読みの上、送信して下さい。

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫