今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」第3弾の前編をお届けいたしました。5人の塾生のみなさんが、それぞれジャンルの異なるポップスに挑みましたが、さすが多数の応募から選ばれただけあって、みなさん本当にレベルが高い! 最初に演奏を聴くと「わ、うまい!」と感心してしまうのですが、そこに葉加瀬さんの的確なアドバイスが加わることで、さらに一段階レベルアップするのがすばらしかったですね。
「パート・オブ・ユア・ワールド」ロック版に挑戦したのは大森駿音さん。大森さんがエッジーに(鋭く)弾いていたのに対して、葉加瀬さんの提案は「ファットに(どっぷり)弾く」。お手本を聴いて納得。ロックならエッジーなのがいいというわけではないんですね。
「美女と野獣」フュージョン版を弾いたのは堀竹優衣さん。スパッと爽快に弾いてくれて、気持ちのよいヴァイオリンでした。葉加瀬さんがそこに求めたのは、フュージョンにふさわしいエレガントさ。これも納得です。
「とびら開けて」カントリー・ミュージック版では、藤井美帆さんが切れ味の鋭い、ダイナミックな演奏を披露。胸のすくような快演でしたが、葉加瀬さんが求めるのはカントリーらしさ。マイクを活用してグルーヴを出すというアドバイスがありました。マイクを使わないクラシックにはない発想法です。
「夢はひそかに」スウィング・ジャズ版では、佐伯ミッシェル藍さんの表情豊かでチャーミングな演奏に魅了されました。葉加瀬さんのお話に「歌のように休符を入れる」とありましたが、これはいろんなジャンルの音楽に言えることかもしれません。
「いつか王子様が」バラード版では、丸山怜子さんが端正でのびやかなヴァイオリンを聴かせてくれました。葉加瀬さんが求めるのはバラードならではの「キュン」とした表情。アドバイス後に見違えるほど演奏が変わってびっくり。
いったい最後に残るのはだれなのか。後編が楽しみです!
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)