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放送2800回記念③ 巨匠・小曽根真から未来の巨匠・藤田真央への伝達(メッセージ)

投稿日:2023年03月11日 10:30

今週は番組放送2800回記念第3弾として、ともに世界を舞台に活躍する、ジャズ・ピアニストの小曽根真さんとクラシック音楽界の若きスター・ピアニスト藤田真央さんの共演をお楽しみいただきました。異なるジャンルの音楽家同士とは思えないほど、ふたりの息がぴたりと合っていましたね。
 最初に演奏されたのは、モーツァルトのピアノ・ソナタ第15番の第1楽章。原曲はピアノ学習者にも広く親しまれています。これを「ペール・ギュント」などで知られるノルウェーの作曲家グリーグが2台ピアノ用に編曲しています。本来、この編曲では1台がモーツァルトのオリジナルそのまま、もう1台はグリーグが付け加えたパートを演奏するようになっているのですが、ここではさらに奏者の大胆な遊び心が加わって、モダンな装いの21世紀版モーツァルトが誕生しました。
 続いて演奏されたのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第3楽章より。原曲はピアノとオーケストラのための作品ですが、今回は2台ピアノによる演奏で。モーツァルトのみならず、ラフマニノフでもこんなに自由な演奏が可能なんですね。次になにが起きるのかわからないドキドキ感があって、とても新鮮な感動がありました。それにしても、厚みのあるピアノの響きがゴージャス!
 最後は小曽根さん作曲の「オベレク」で、真央さんがジャズのフィールドに挑んでくれました。リハーサルを重ねるうちに、真央さんの新しいアイディアが加わることで、作曲者である小曽根さんも気づかなかったような楽曲の可能性が開かれたというお話が印象的でした。クラシック音楽でもバロック音楽や古典派の時代には即興の要素があったわけですし、演奏者によって作品の可能性が広がっていくのはあらゆるジャンルの音楽に共通して言えることでしょう。ふたりの音の対話はスリリング。まさに今そこで音楽が生まれている瞬間を味わうことができました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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