今週は番組放送2800回記念第2弾として、坂本龍一さんの作品に国際的に活躍する若手演奏家たちが真正面から取り組んでくれました。坂本さんご本人からのメッセージもあり、とても興味深かったですよね。
一曲目の「The Last Emperor(ザ・ラスト・エンペラー)」は、アカデミーオリジナル音楽作曲賞を受賞した名曲。西洋的でも東洋的でもあり、ノスタルジックでもあり現代的でもあり、いろいろな要素が一曲につまっています。弦楽四重奏にピアノと箏が加わるという独自の編成でしたが、曲の魅力がよく伝わってきたのではないでしょうか。角野さんが「弦楽四重奏が大きな川を作ってくれた」とたとえてくれましたが、まさに雄大な大河の流れを思わせるような演奏だったと思います。
2曲目の「andata(アンダータ)」は、2017年発売のアルバム「async」に収録された一曲。簡潔で叙情的なメロディに、混沌としたノイズが加わります。今回のアレンジではヴァイオリンの成田さんがノイズ部分を担当。オルガンのメロディとヴァイオリンのノイズ部分が絶妙のバランスで溶け合って、ゆるやかで瞑想的な音楽の流れが生み出されていました。角野さんが途中から東京オペラシティのパイプオルガンを弾いていたのにはびっくり。
LEOさんの選曲は「20211201」。曲が書かれた日付がタイトルになっているんですね。坂本さんによれば「なにも考えずにピアノに触り即興的に弾いたもの」。エフェクター付きの箏が幻想的で、漂泊するような情景を連想させます。
最後に演奏されたのは、坂本さんが東京藝術大学在学中の19歳で書いた弦楽四重奏曲の第1楽章。ウェーベルン、シェーンベルク、ベルクといった新ウィーン楽派の作風を連想させる書法で書かれており、後の坂本さんの作風とはまったく異なります。集中度の高いすばらしい演奏で、新鮮な感動がありました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)