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奄美のシマ唄を歌い継ぐ休日

投稿日:2022年01月08日 10:30

今週は元ちとせさん、里アンナさんのおふたりをお招きして、奄美のシマ唄をお楽しみいただきました。
 言葉も違えば、歌唱法も独特で、強烈に異文化を感じさせる音楽なのですが、それにもかかわらずどこか懐かしさを感じさせるのがシマ唄の不思議なところ。心の琴線に触れる歌声をたっぷりと味わうことができました。訳詞を見なければ意味がわからないという点では、クラシックの歌曲やオペラを聴くときと同じ心構えを要するのですが、シマ唄には言葉を超越してダイレクトに伝わってくる生々しい感情表現が込められているように思います。
 「シマ唄」という言葉、てっきり「島唄」だと思っていたら、実は集落やテリトリーを意味する「シマ」の唄ということだったんですね。日々の生活の中から唄が生まれ、譜面ではなく口伝で歌い継がれてゆくという成り立ちはほとんどの民謡に共通する特徴だと思いますが、それが土地に根差した形で現代まで歌い継がれているのは稀有なことだと思います。
 おもしろいなと思ったのは昭和のシマ唄、「ワイド節」。古い曲を歌い継ぐだけではなく、新曲も書かれているんですね。曲名から広々とした光景を歌った曲を想像してしまいましたが、「ワイド」とは徳之島の方言で「がんばれ」「やった」の意。徳之島には闘牛の文化があり、その掛け声なんだそうです。スペインの闘牛でいうところの「オーレ!」みたいなものでしょうか。曲調から人々の熱気が渦巻いている様子が伝わってきます。闘牛というと、ついビゼーの「カルメン」を連想してしまうのですが、情熱的な表現はどこか一脈通じるところがあるような気もします。
 最後に演奏された「豊年節」は、アコーディオン、ギター、パーカッションが加わった現代的なアレンジで。これは古くて新しい音楽、ローカルでありながらユニバーサルな音楽だと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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