今週は好評のブリーズバンド企画の第4弾。ブリーズバンドとは7人制吹奏楽という番組発の合奏スタイルです。コロナ禍のなか、従来のように大勢が集まって練習や演奏をするのは難しいだろうという発想から生まれた合奏スタイルですが、その本質は7人全員が主役であること。オーケストラと室内楽には別の楽しみがあるように、ブリーズバンドには大人数の吹奏楽にはない別の魅力があると思います。
今回は上野耕平さんがおっしゃったように「よりエンターテインメント色を強めた」アレンジによる3曲が演奏されました。いずれも当ホームページより譜面をダウンロードできます。
1曲目は「うっせぇわ」。篠田大介さんによるブラスロック・アレンジでお楽しみいただきました。トップレベルの奏者たちによる演奏はキレがあって、パワフル。原曲にはとてもインパクトのある歌詞が付いているわけですが、言葉なしでアグレッシブさを表現しているのがこのアレンジの聴きどころ。「アナーキーな即興」の部分がカッコよかったですよね。
2曲目はチャイコフスキーの名作バレエをひとひねりした川島素晴さん編曲による「白鳥たちの湖」。本来の「白鳥の湖」では、悪魔の呪いで白鳥に姿を変えられたオデット姫と王子ジークフリートとの悲恋が描かれるわけですが、まさかの学園ドラマ仕立て。ヨソ者役の白鳥にサン=サーンスの「白鳥」がやってくるという、二大「白鳥」名曲の共演(?)が実現しました。上野さんのチャイコフスキー「白鳥」とMatt Roseさんのサン=サーンス「白鳥」の間を、フルートの多久潤一朗さんが取り持っている場面がおかしすぎます。
最後は映画「ピノキオ」より「星に願いを」を挾間美帆さんによるリズム変奏曲アレンジで。ボサノヴァ、ハバネラ、サンバ、スウィングと、あたかも耳で楽しむ世界旅行のよう。パーカッションの不在をまったく感じさせない躍動感がありました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)