今週は先週に引き続いて、「題名プロ塾」第2弾の1次審査後編をお届けしました。今回のテーマは、直前に渡された譜面をいかに弾きこなせるか。5人の受講生のみなさんが、それぞれ多彩なアレンジが施された有名曲に挑みました。メインのメロディを奏でるのはピアノで、ヴァイオリンの役割はオブリガート(対旋律、裏メロ)。全員が異なる課題を与えられていましたが、葉加瀬さんのアドバイスで、演奏ががらりと変わるのがおもしろかったですよね。
嶋田雄紀さんが演奏したのはバラード・アレンジによる「イエスタデイ」。けれんのないまっすぐな演奏でしたが、葉加瀬さんのアドバイスを受けた後は、ぐっと彫りの深い表情の音楽になりました。
雑賀菜月さんはジャズワルツ・アレンジによる「星に願いを」。葉加瀬さんはクラシック音楽にはないリズム感を求めます。なるほど、スイングというのはこういうことなんだなと腑に落ちたのではないでしょうか。
加藤光貴さんは16ビートシャッフル・アレンジの「アメイジング・グレイス」。最初からとても精彩に富んだ演奏で、葉加瀬さんからは「使えるねえ」の一言。見事でした。
小柴千明さんの16ビート・アレンジ「ロッキーのテーマ」では、葉加瀬さんの「ミシミ ミシミは喜ばないと」というアドバイスが印象的でした。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲にも似た場所がありますが、これがカッコいいんですよね。クライマックスとは別に用意されたもうひとつの見せ場とでも言いましょうか。
堀内優里さんのブルーグラス・アレンジ「カノン」では、葉加瀬さんいわく「アイリッシュは、アップビートをダウンで弾く」。リズム楽器がなくても踊れる音楽でなくてはならないといいます。
葉加瀬さんのレクチャーを聞いていると、単にヴァイオリンの奏法に留まらない、音楽の仕組みや成り立ちに触れることができて、本当に刺激的です。音楽の奥深さを痛感せずにはいられません。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)