今週はバンドネオンの小松亮太さん、アコーディオンの田ノ岡三郎さん、小春さんの3人の蛇腹楽器奏者のみなさんをお招きいたしました。
蛇腹楽器にもずいぶんいろんな種類があります。アコーディオンはなじみがあるようでいて、実はよく知らない楽器かもしれません。そもそもアコーディオンには鍵盤式とボタン式があるのをご存じでしたか。石丸さんもおっしゃっていましたが、昔、学校に鍵盤式のアコーディオンが置いてあったのを覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。学校にあったのは教育用のアコーディオンだったと思いますが、今は鍵盤ハーモニカが普及しているので、昔ほど出番はないかもしれません。
これに比べるとボタン式のアコーディオンを見かける機会は少ないと思いますが、実は歴史が古いのはこちらのほう。一見、鍵盤があったほうがわかりやすくて便利なようにも見えますが、小春さんの「ボタン式は同じ指遣いでキーを変えられるので、歌の伴奏に適している」という解説を聞いて、目から鱗が落ちました。なぜあんなにたくさんのボタンがあるのか不思議だったのですが、これならキーが変わっても、まったく同じ指の動きで対応することができます。
バンドネオンは蛇腹楽器のなかでも独自性の強い楽器だと思います。絶滅危惧種などと言われるくらいですから、実物を触ったことも見たこともない人が大半でしょう。しかし、さまざまな名曲を通して、バンドネオンの音を耳にする機会は決して少なくありません。これはまさに小松亮太さんのおかげでもあるのですが、鑑賞するための楽器として確固とした地位を築いています。そして、なんといってもバンドネオンの世界にはピアソラという大音楽家がいます。ピアソラの「リベルタンゴ」や「アディオス・ノニーノ」といった数々の名曲が忘れ去られない限り、この楽器が廃れることはないのではないでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)