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世界が認めた若き才能の音楽会2020

投稿日:2020年08月15日 10:30

今週は第30回出光音楽賞の受賞者である藤田真央さん、服部百音さん、佐藤晴真さんの演奏をお届けいたしました。出光音楽賞は若手音楽家の登竜門として知られています。例年、東京オペラシティコンサートホールで開催される受賞者ガラコンサートの模様をお届けしていますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大のため公演を開くことができておりません。そこで3人の受賞者のみなさんをスタジオにお招きして、室内楽を共演していただきました。
 藤田さんが選曲したのは、ラヴェルのピアノ三重奏曲の第4楽章。フランス音楽を選んだのは少し意外な感もありましたが、これは名手3人がそろって弾くにふさわしい傑作でしょう。巧みなオーケストレーションで知られるラヴェルですが、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの3人の編成であっても、やはり洗練された色彩感は際立っています。高揚感にあふれた見事な演奏を披露してくれました。
 服部さんが選んだのは、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番の第2楽章。「喜怒哀楽」の「怒」と「哀」が表現された曲にシンパシーを感じるという服部さんにぴったりの選曲でしょう。プロコフィエフは人間のダークサイドに切り込んだ作曲家という印象がありますが、特にこの曲には彼一流の刺々しいユーモアやアイロニーが込められていると思います。服部さんの演奏はニュアンスが豊か。作品の奥行きを一段と感じさせる演奏で、曲が進むにつれて次第に白熱してゆく様子は圧倒的でした。
 佐藤さんは難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールチェロ部門の優勝者。ミュンヘンゆかりの大作曲家、リヒャルト・シュトラウスの「万霊節」を演奏してくれました。万霊節とはキリスト教における死者の霊を祀る記念日。原曲の歌曲では今は亡き愛する人への想いが切々と歌われています。過去を懐かしんでさまざまな思いが交錯する様子が、情感豊かに表現されていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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