今週は指揮者の原田慶太楼さんの持ち込み企画で「ポップスをサックスで楽しむ音楽会」。指揮者が演奏する楽器といえば、多くの場合ピアノ、あるいはヴァイオリンですが、原田さんがサックスを吹くとは意外でした。
ソロ楽器として活躍するイメージの強いサックスですが、今回はソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス、バスサックスの5種類の楽器が集まったアンサンブル。こんなふうに同属楽器だけで、厚みのある華やかなサウンドを出せるのがサックスの魅力です。「Sing,Sing,Sing」から「上を向いて歩こう」まで、多彩な名曲が並びました。
サックスは金属でできていても、発音の仕組み上、木管楽器に分類されます。そして木管楽器のなかでは比較的新しい楽器です。1846年にベルギーの吹奏楽団長アドルフ・サックスが特許を取った楽器がその原点。つまり発明者の名前にちなんで楽器名が付けられたんですね。アドルフ・サックスは木管楽器と金管楽器の長所を兼ね備えた楽器を作ろうと考えて、この楽器を発明したそうです。機能性と表現力の高さは新しい楽器ならでは。原田さんが「サックスは人の声に近い」とおっしゃっていたように、サックスはニュアンスに富んだ歌うような表現ができると同時に、輝かしくパワフルサウンドを出すこともできます。
サックスが発明された時点で、すでにオーケストラの木管楽器セクションはフルート属、オーボエ属、クラリネット属、ファゴット属が基本メンバーとして固定されていました。そのためサックスはオーケストラに定位置を確保するまでには至りませんでしたが、吹奏楽、ポップス、ジャズなど幅広いジャンルの音楽で活用されることになりました。もちろん、クラシックで使われることもあります。サックスはジャンル問わずの万能選手と言えるでしょう。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)