今週は日本を代表する名手たちが、ここでしけ聴けないデュオを組むドリームデュオ第2弾。意外性のあるデュオからオーソドックスなデュオまで、多彩な顔触れがそろいました。
最初のデュオはチェンバロの鈴木優人さんとマリンバの塚越慎子さん。この楽器の組合せは普通では考えられません。チェンバロは本来バロック音楽など古い時代の音楽を演奏するための楽器。ピアノの普及とともに18世紀末にいったん姿を消しますが、20世紀になって古楽復興運動により復活を果たしました。一方、マリンバは20世紀の新しい楽器。雅やかなチェンバロとモダンなマリンバというギャップが新鮮です。でも、一緒になると意外にも心地よい響きが聞こえてきます。フランス・バロック期の作曲家クープランの「神秘的なバリケード」が斬新な音楽に生まれ変わりました。プログレッシブ・ロックの「タルカス」に、チェンバロがすっかりなじんでいるのもおもしろかったですよね。
チェロの岡本侑也さんとピアノの藤田真央さんはいずれも国際音楽コンクールで脚光を浴びる若き実力者。チェロとピアノのデュオは伝統的な組合せですので、名曲がたくさん書かれています。おふたりが選んだのはドビュッシーが最晩年に書いた難曲、チェロ・ソナタ。チェロとピアノのデュオから清澄で流麗な音楽が生み出されました。
最後に共演したのは尺八の藤原道山さんとタブラのユザーンさん。こんな楽器のデュオはまずないだろうと思いきや、それぞれの師匠筋がかつて共演していたとは。曲はバッハの「バディネリ」。日本とインドの楽器でドイツの音楽を演奏するという、まったくボーダーレスなデュオになりました。「バディネリ」とは、ふざける、冗談といった意。遊び心のある陽気な音楽に添えられた曲名です。即興の要素もふんだん加わって、世界でただひとつの「バディネリ」が誕生しました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)