もしもクラシックの大作曲家たちが「さくらソング」を作ったら……。今週の「Jポップ さくら協奏曲の音楽会」はそんな発想で定番の「さくらソング」を協奏曲に仕立ててみました。協奏曲は「急-緩-急」からなる全3楽章が基本の形。これに従いながら、楽章ごとにソリストが変わる豪華仕様の協奏曲が誕生しました。
第1楽章はヴィヴァルディ風「チェリーブラッサム」。ヴィヴァルディは生涯に500曲以上もの協奏曲を書いたイタリア・バロック期を代表する作曲家です。代表作「四季」の中でもっとも有名な「春」がオーケストラで奏でられると、小林美樹さんの独奏ヴァイオリンが「チェリーブラッサム」で応えます。時空を超えて、イタリアの春と日本の春がいっしょに到来したかのような晴れやかさです。
第2楽章はメンデルスゾーン風の森山直太朗「さくら」。協奏曲では第2楽章にしっとりとした抒情的な曲想が置かれるのが一般的です。メンデルスゾーンの有名な無言歌「春の歌」に箏が加わって、和洋が融合した響きから次第に「さくら」が聞こえてきました。オーケストラと箏の響きが意外にもマッチしているのにびっくり。オーボエの愁いを帯びた音色も印象的でしたね。「春の歌」と「さくら」が同時進行した後、最後はフルートからメンデルスゾーンの歌曲「歌の翼に」が飛び出して思わずニヤリ。
第3楽章はヨハン・シュトラウス2世風のコブクロ「桜」。協奏曲の第3楽章では、活発で躍動感あふれる曲想が用いられます。もしもヨハン・シュトラウス2世が、コブクロ「桜」を書いていたら。高木綾子さんの軽やかで澄んだフルートの音色は春にぴったり。ワルツ「春の声」と「桜」が同時進行して、途中から「美しく青きドナウ」まで乱入する春祭りへ。春爛漫の様子を連想させる華やかなフィナーレでした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)