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ジャズが楽しくなる音楽会

投稿日:2020年03月07日 10:30

ジャズっておもしろそうなんだけれど、なんだか難しそう、聴き方がよくわからない……。そんなふうに思っていた方も、今回の放送でぐっとジャズが身近に感じられたのではないでしょうか。
 ジャズの基本の流れは「テーマ、アドリブ、テーマ」というお話がありました。よくジャズではアドリブが大切だといいますが、素朴な疑問がわきます。「だれかがアドリブで自由気ままに演奏しはじめたら、他の人たちはどうやって合わせるの?」。なんの約束事もなく、みんなが勝手に演奏をしたら曲にならないはず。でも「テーマと同じコードで演奏する」という約束事がちゃんとあったんですね。「マック・ザ・ナイフ」の演奏では、一定のコード進行もに従って、メンバー間でアドリブを回していく様子がよくわかりました。みんなで一緒に演奏する場面がありましたが、全員が同じコード進行で演奏しているため、音楽はきれに調和が保たれていました。もしばらばらのコード進行で演奏したら、ただの不協和音の連続になってしまうでしょう。そして、最後には最初のテーマに帰ってくる。これで「あ、終わったんだ」とわかります。
 クラシック音楽に親しんでいる方は、この説明を聞いて、どこかで聞いたことのある話だなと思いませんでしたか。多くの大作曲家たちが残した変奏曲も、やはり最初にテーマ(主題)が演奏され、これにテーマに基づくさまざまな変奏が続き、最後にまたテーマが帰ってくるという構成になっています。クラシックの場合は、すべてが楽譜に書かれていますが、モーツァルトもベートーヴェンもバッハも、アドリブの名手だったと伝えられています。モーツァルトの変奏曲とは、モーツァルトの天才的なアドリブを楽譜に書き残して保存したものと解釈できるかもしれません。協奏曲のカデンツァも本来はアドリブが前提。アドリブはジャズに限らず、音楽の根本をなすものなのでしょう。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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