今週と来週の2週にわたって、本場ウィーンの精鋭たちが集うウィーン・リング・アンサンブルの演奏をお届けします。毎年元旦にウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが世界中に中継されますが、あのウィーン・フィルのメンバーたちが日本にやってきて、ウィンナワルツやポルカを演奏してくれました。この「本物感」は格別です。
ウィーン・リング・アンサンブルを率いるのは名コンサートマスター、ライナー・キュッヒル。なにしろ45年にわたってウィーン・フィルのコンサートマスターを務めたくらいですから、カラヤン、バーンスタイン、クライバーなど、伝説的な名指揮者たちとの共演も多数。そしてキュッヒルはどんな大指揮者からも一目置かれる存在でした。ただ指揮者に追従するのではなく、どんなときでもオーケストラを支えて、ウィーンのスタイルを体現するのがキュッヒルだったと思います。
キュッヒルはウィーン・フィルを定年退職後もウィーン・リング・アンサンブルとしての来日したり、NHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターを務めるなど、たびたび日本の舞台に登場してくれています。その輝かしくパワフルなヴァイオリンの音色は健在。奥様は日本人とあって、日本語もお上手です。日本のクラシック音楽ファンには、彼に特別な親しみと尊敬の念を抱いている方が多いのではないでしょうか。
ウィーン・リング・アンサンブルのメンバーの多くが音楽一家の出身であるように、ヨハン・シュトラウス2世もまた音楽一家に生まれました。父ヨハン・シュトラウス1世、弟ヨーゼフ・シュトラウスら、それぞれが名曲を残しています。ワルツ「酒、女、歌」は、ヨハン・シュトラウス2世の数あるワルツのなかでも屈指の名曲。優雅さと雄大さを兼ね備えたロマンティックな味わいは、この作曲家ならではですね。
次週はウィンナワルツの最高傑作、「美しく青きドナウ」も演奏されます!
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)