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天才による前代未聞の音楽会

投稿日:2018年09月01日 10:30

今週はストラヴィンスキーの「兵士の物語」をお楽しみいただきました。石丸幹二さんがこれまでになんども朗読で上演に参加している作品です。
 ストラヴィンスキーといえば20世紀音楽に革命をもたらした真の天才作曲家。バレエ音楽の「春の祭典」「火の鳥」「ペトルーシュカ」といった革新的作品でヨーロッパの楽壇にセンセーションを巻き起こし、時代の寵児となりました。これらはいずれも大編成のオーケストラを用いた作品です。
 ところが第一次世界大戦が本格化すると、これまでのような大規模な作品を上演することは困難になります。しかも、ロシア十月革命の影響で祖国からの収入も途絶え、ストラヴィンスキーは窮地に立たされました。
 そこで、少人数で演奏できて、各地を巡業できるようなタイプの作品を書けないかと考えて作られたのが「兵士の物語」。7人の奏者に朗読やパントマイムが加わるなど、さまざまな上演形態が可能です。器楽のみによる組曲版も盛んに演奏されています。
 「兵士の物語」は音楽的にも斬新ですが、ストーリーもよくできています。休暇中の兵士が故郷への帰り道でヴァイオリンを弾いていると、老人に化けた悪魔が「富を得る本」とヴァイオリンの交換を持ちかけます。兵士が老人の家で三日間を過ごすと、その間に三年の月日が流れていました。兵士が故郷に帰ると、婚約者はすでに別の男と結婚し、子供をもうけています。兵士は本を使って金持ちになりますが、心は満たされません。旅に出た兵士は病に伏せる王女に出会います。兵士は悪魔と賭けで勝負してヴァイオリンを取り戻すと、ヴァイオリンを王女に聴かせて病を治します。ふたりは結婚するのですが、兵士は故郷が忘れられません。「国の外に出てはならない」と悪魔から警告されたにもかかわらず、兵士は国境を越えてしまい、魂を悪魔に奪われてしまいます。
 凡庸な男の成功と破滅の物語。なんとも示唆的です。

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