今週は「陰と陽のベートーヴェンの音楽会」。日本の若い世代を代表するピアニスト、小菅優さんに得意のベートーヴェンを演奏していただきました。ベートーヴェンの音楽の魅力を「陰」と「陽」のふたつの視点から語ってくれたのがおもしろかったですよね。
小菅優さんはすでにCDでベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をリリースしています。5年間をかけて、水戸芸術館でセッション録音が行われました。「悲愴」や「月光」「熱情」といった人気曲を録音するピアニストはたくさんいますが、全32曲のピアノ・ソナタをこの若さで世に問うのは異例のこと。これは偉業といってもいいでしょう。
そんな小菅さんが「陰」のベートーヴェンとして取り上げてくれたのが「テンペスト」第1楽章。小菅さんは、バスとソプラノの掛け合いを「父と娘の言い合い」と表現していました。最初は父親に押されていた娘が、だんだん威勢がよくなって「ナイン!」(ドイツ語のノー!)を連発するという解釈には、思わず膝を叩きました。ベートーヴェンには娘はいませんけど(生涯独身でしたので)、でも、あれはたしかに父と娘ですよね。もしかしたら、だれかモデルが身近にいたのかも……?
「陽」のベートーヴェンは、ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」第1楽章。「幽霊」などという題名がついていますが、第1楽章は明るい曲です。小菅優さんと五嶋龍さん、さらにはウィーン・フィルのメンバーであるヘーデンボルク直樹さんによる豪華共演が実現しました。ヘーデンボルク直樹さんは、スウェーデン人と日本人の両親の音楽一家のもと、ザルツブルグに生まれ育った気鋭のチェリスト。日本語も流暢にお話しになるんですね。
小菅さんがおっしゃっていたように、この曲は「仲の良い3人の対話」。音楽を通じた3人の対話が、温かい雰囲気を醸し出していました。
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陰と陽のベートーヴェンの音楽会
投稿日:2016年11月13日 09:30
コメント
題名は幽霊なのにとても暖かでした。春の陽射しの中に連れ出してもらえたようでした。素敵な共演をありがとうございました。
へえ~、これもベートーヴェンなんですね。ベートーヴェンといえば、「運命」のようなドスンと暗くて、がさつなイメージがあるのですが、今回の曲を聴くとロマンチックな部分の要素もあるんですね。ビックリしました。今回は今までのベートーヴェンのイメージの見方が変わった演奏会でした。クラシック音楽にますます興味がわきました!
なんとも贅沢な企画でした。ありがとうございます。陰と陽…小菅さんの解説が分かりやすくかつ面白かったです。今回は2曲のみでしたが 1曲1曲に様々なドラマがあるのでしょうね。