今回のゲストはヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん。舞台に登場した葉加瀬さんと龍さんがヒシッと抱擁する姿を見て驚いた方も多いのでは? なんと、おふたりは旧知の間柄。龍さんがまだ幼かった頃からのお知り合いなんだそうです。ジャンルの枠にとらわれない活動を展開する葉加瀬さんと、世界の名門オーケストラと共演するなどクラシックの王道を歩む五嶋龍さん。活動のフィールドを異にするおふたりですが、こんなに親しい関係だったんですね。葉加瀬さんを「先輩!」と呼ぶ龍さんの表情が生き生きとしていたのが印象的でした。
葉加瀬さんは自作のメドレーで「弾き振り」を披露してくれました。楽器を演奏しながら、指揮も同時に行うのが「弾き振り」。しかも自作を演奏していましたので、ここでの葉加瀬さんは作曲家であり、演奏家であり、指揮者であるという一人三役をこなしていたことになります。
実はクラシック音楽の歴史において、作曲家が演奏家や指揮者を兼ねることはまったく珍しいことではありませんでした。むしろかつてはそれが普通の音楽家のあり方だったのです。ところが時代が進むにつれて分業化が進み、指揮は専門の指揮者が担い、演奏家は演奏に専念して作曲をしなくなり、作曲家も作曲のみを行いステージに立たない人が増えてきました。それだけ各々が高度化してきたことはたしかなのでしょうが、自分の曲を自分で演奏するのが音楽の原点ではないかという思いはどこかに残ります。
その意味では、現在の葉加瀬さんの音楽活動は、18世紀にモーツァルトが行なっていたことと変わりありません。
最後の「情熱大陸」では、葉加瀬さんと龍さんの共演が実現しました。思い切りはじける龍さんと、温かい眼差しを注ぐ葉加瀬さん。迫力がありましたよね。東京オペラシティコンサートホールの客席がわきあがりました。