将来有望な若手音楽家を表彰する出光音楽賞の受賞者ガラコンサートが今年も開催されました。第26回出光音楽賞の受賞者は、川瀬賢太郎さん(指揮)、山根一仁さん(ヴァイオリン)、薮田翔一さん(作曲)の3名。将来を嘱望される若き実力者たちがそろいました。
指揮の川瀬賢太郎さんは1984年生まれ。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めています。経験が求められる指揮者の世界で、若くして常任指揮者のような要職を務めるのは容易なことではありません。「神奈川フィルの顔」としてオーケストラを率いつつ、各地のオーケストラにも客演して、目覚ましい活躍をくりひろげています。本日のシューマンの交響曲第3番「ライン」では、横浜シンフォニエッタとともに、雄大な情景が目に浮かぶかのような見事な演奏を披露してくれました。
ヴァイオリンの山根一仁さんは1995年生まれ。まだ本当にお若いのですが、すでにリサイタルや協奏曲などで、たびたびすばらしい演奏を聴かせてくれています。なんといってもその魅力は切れ味が鋭く、思い切りのよい表現、そして鮮やかな技巧。ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番のフィナーレには鳥肌が立ちました。山根さんはこの曲が「幼稚園の頃から大好きだった」というのですから驚きます。モーツァルトやチャイコフスキーならともかく、3歳にしてショスタコーヴィチで踊っていたとは。そして、9歳で「題名のない音楽会」に出演していた映像が残っているのにもびっくり。長髪でかわいらしい少年だったんですね。
作曲の薮田翔一さんは昨年、ジュネーヴ国際音楽コンクール作曲部門で優勝を果たして話題を呼びました。コンクール受賞作のBillowは先鋭な作風で書かれた弦楽四重奏のための作品だったのに対して、本日の「風神雷神」はぐっとドラマティックで、大作映画に用いられてもおかしくないようなスケールの大きな作品でした。作曲にあたっては「どのような場所で、だれに向けた音楽なのかをよく考える」とおっしゃっていたのが印象的です。大きな可能性が広がっているのを感じます。
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第26回出光音楽賞受賞者ガラコンサート
第25回出光音楽賞受賞者ガラコンサート
今回は第25回出光音楽賞受賞者ガラコンサートの模様が放送されました。出光音楽賞といえば、将来有望な若手音楽家を表彰する賞として、クラシック音楽界ではだれもが知る存在です。
今回の受賞者は3名。ヴァイオリンの周防亮介さんに加えて、三味線の本條秀慈郎さん、バンドネオンの三浦一馬さんといった少し珍しい楽器の演奏家が選ばれているのが目を引きます。
特にバンドネオン。一見、アコーディオンに似ているのですが、番組中でも解説されていたように、不思議な配列のボタンによって音を出す仕掛けになっています。ドイツ生まれの楽器で、アルゼンチンに渡ってタンゴの楽器として広く使われるようになりました。日本では90年代にアルゼンチンのバンドネオン奏者、ピアソラの音楽がブームになりましたので、そのときにこの楽器を初めて知ったという方も多いのでは?
そのピアソラに続く、現代のバンドネオンの巨匠が、三浦一馬さんの師ネストル・マルコーニ。三浦さんは16歳のときにマルコーニの生の演奏を聴いて衝撃を受け、終演後にマルコーニを探して打上げ会場のお寿司屋さんにまで押しかけて、その場で演奏を聴いてもらったそうです。晴れ舞台で演奏する師匠のバンドネオン協奏曲、カッコよかったですよね。
三味線の本條秀慈郎さんが演奏されていたのは大家百子作曲の「薺(なずな)舞 ―三味線とオーケストラのための」。こちらも現代の作品です。日本の伝統楽器と西洋音楽との接点から、新しい音楽世界が生み出されていました。
唯一、伝統的なクラシックの名曲を弾いたのがヴァイオリンの周防亮介さん。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲から第1楽章が演奏されました。若さに似合わず風格の漂うチャイコフスキーとでも言いましょうか。堂々たる名演でした。会場から「ブラボー!」の声があがったのも納得。将来が楽しみな逸材です。