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日比谷公会堂さよなら音楽会

投稿日:2016年03月20日 09:30

今、日比谷公会堂でコンサートを聴いたことがあるという方はそう多くはいらっしゃらないかもしれません。しかし、かつてはこの場所こそが東京のクラシック音楽シーンの中心地でした。開館は1929年。後に東京文化会館やサントリーホール、東京オペラシティなど、東京にはすぐれたコンサートホールがいくつも誕生することになりますが、日比谷公会堂はその先駆けとなった存在です。メニューインやシャリアピン、ハイフェッツなど、伝説の巨匠たちがこの舞台に立っています。
 その日比谷公会堂がこの3月をもって休館を迎えることになりました。会場の独特の雰囲気は放送を通じても伝わったのではないかと思います。現代のホールとは一味違った趣があり、歴史の重みと品格を感じさせます。定員は2000人強ですので、現代のコンサートホールと変わりません。しかし客席に座ってみると意外と舞台が近く感じられます。残響が少なく、オーケストラの音は豊麗というよりは、生々しくひきしまったサウンドに聞こえます。
 2007年にこの日比谷公会堂でショスタコーヴィチ作曲の交響曲全曲演奏会を指揮したのが井上道義さん。今年2月にはふたたびこの会場でショスタコーヴィチの交響曲第9番と第15番を指揮しています。番組では交響曲第9番の第1楽章をお聴きいただきましたが、かねてよりショスタコーヴィチの作品に特別な情熱をもって取り組んできたマエストロの思いが伝わってきたのではないでしょうか。軽快でコミカルな表情とアイロニーが一体となったような、一筋縄ではいかない多面性はショスタコーヴィチならでは。日比谷公会堂の古き良き伝統と、ショスタコーヴィチのモダンな響きが不思議と調和していました。
 この会場で若い五嶋龍さんが演奏している姿を見ることができたのもうれしかったですね。ブルッフのヴァイオリン協奏曲に、胸がいっぱいになりました。

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