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ミュージカルをミュージカルで説明する音楽会リターンズ

投稿日:2026年01月31日 10:30

 今週は大反響をいただいたミュージカル企画の第2弾、「ミュージカルをミュージカルで説明する音楽会リターンズ」をお届けしました。ミュージカルやオペラの台詞の部分が歌になっているように、音楽番組のトーク部分もぜんぶ歌になっていてもいいのでは? そんな発想から生まれたのがこの企画。ミュージカルをミュージカル仕立てで説明するメタミュージカルを目指しました。
 今回のテーマは「愛」。ミュージカルに登場するさまざまな愛を題材とした名曲を、真彩希帆さん、石丸幹二さん、今井清隆さんに歌っていただきました。
 最初の曲はアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲の「ラブ・ネバー・ダイ」より「心で見つめて」。名作「オペラ座の怪人」から10年後を舞台に、クリスティーヌと息子グスタフ、ファントムたちの物語が描かれます。ここで表現されるのは「母の愛」。真彩希帆さんの清澄でのびやかな声がすばらしかったですね。続く「君の歌をもう一度」では、同作でクリスティーヌへの「執念の愛」を抱き続けるファントムの想いが吐露されます。石丸幹二さんのリリカルかつ力強い歌唱に圧倒されます。
 3曲目はアラン・メンケン作曲の「美女と野獣」より「愛せぬならば」。ミュージカル界の重鎮、今井清隆さんが深く温かみのある声で、ビースト(野獣)の「絶望の愛」を歌いあげます。円熟の歌唱に会場がわきあがりました。これは泣けます。
 4曲目はフランク・ワイルドホーン作曲の「ジキル&ハイド」より「罪な遊戯」。同一人物の善悪両面を体現するジキルとハイド、そして娼婦ルーシーの物語が描かれます。ハイドとルーシーの「危険な愛」が、石丸幹二さんと真彩希帆さんによってスリリングに歌われました。
 おしまいはクロード=ミシェル・シェーンベルク作曲の「レ・ミゼラブル」より「民衆の歌」。全員の歌唱と田中祐子さん指揮東京フィルのゴージャスなサウンドで、華やかなクライマックスが築かれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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角野隼斗が師匠ルイサダと奏でる連弾の音楽会

投稿日:2026年01月24日 10:30

 今週は角野隼斗さんと、その師であるジャン=マルク・ルイサダさんの連弾をお楽しみいただきました。
 ルイサダさんはフランスを代表するピアニストのひとり。長年にわたって世界を舞台に活躍を続ける大家ですが、話しぶりはチャーミングで、気さくな人柄が伝わってきます。かねてより日本との縁は深く、テレビ番組でピアノレッスンの講師を務めたこともあります。パリ留学中の角野さんがルイサダさんのリサイタルを聴いて感銘を受けたことをきっかけに、ふたりの師弟関係が始まりました。今回は角野さんの熱望により、師弟共演が実現。こういった有名ピアニスト同士の連弾を聴く機会は決して多くありません。信頼関係で結ばれたふたりによる、親密な音の対話がくりひろげられていました。
 フォーレの組曲「ドリー」は連弾の定番曲。タイトルのドリーとは、作曲者が親しくしていたバルダック家の娘エレーヌの愛称です。フォーレはエレーヌの誕生祝いとして毎年1曲ずつを贈り、後にこれらの曲を中心に組曲「ドリー」が編まれました。「子守歌」は組曲中、最初に書かれた1曲です。優しく、慈しみに満ちた音楽でした。
 ラヴェルの「マ・メール・ロア」はオーケストラ版でも広く知られる組曲です。童話集が題材になっており、今回は第1曲「眠りの森の美女のパヴァーヌ」と、第3曲「パゴダの女王レドロネット」が演奏されました。「眠りの森の美女」の物語はペローの童話やディズニー映画でよく知られています。淡いノスタルジーが漂っていました。「パゴダの女王レドロネット」で題材となっているのは「緑の蛇」という童話。こちらは入手容易な邦訳がないため、日本ではほとんど知られていませんが、物語の一場面に中国風の人形(パゴダ人形)が主人公をもてなす場面があります。曲調が東洋風なのはそのため。ユーモアがあって、幻想的でありつつも、きらびやか。角野さんとルイサダさんの息がぴたりと合っていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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名曲なのにタイトルが間違っている音楽会

投稿日:2026年01月17日 13:11

 今週はタイトルと中身が食い違っている名曲に注目してみました。筆頭に挙げられるのはバッハの「G線上のアリア」。これは本当に不思議な現象なんですよね。原曲は管弦楽組曲第3番の第2曲「エール」と言います。ここでの「エール」とは「アリア」のこと。原曲は弦楽合奏と通奏低音で演奏されますが、これをドイツのヴァイオリニスト、アウグスト・ウィルヘルミがヴァイオリン曲に編曲しました。この編曲がヴァイオリンの最低音の弦、G線のみで演奏できる編曲だったことから「G線上のアリア」と呼ばれるようになり、なぜか原曲までもが「G線上のアリア」の題で広く親しまれるようになってしまいました。原曲と「G線」はなんの関係もありません。しかも、現代ではヴァイオリン曲として演奏する際も、もっぱらG線を使わずに弾かれるとか。今回、山根一仁さんがあえてG線だけで演奏してくれましたが、落ち着いた温かいムードがあって、これはこれで味わいがあります。
 諸説あるのは、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の一曲、「葦笛の踊り」。加藤昌則さんの「お菓子のミルリトンが誤訳で葦笛になってしまった」という説には説得力があります。なにしろ「くるみ割り人形」は、少女クララが王子さまとお菓子の国へと旅立つ物語。ほかに「こんぺいとう」や「チョコレート」が出てくるのですから、お菓子のミルリトンが出てきても不思議はありません。一方、多久潤一朗さんは、本当は「羊飼いたちの踊り」ではないかと指摘します。羊飼いの笛であれば、それに近い音色のフルートが主役になるのも納得できます。いったい、どちらなんでしょうね。
 ビゼーの「アルルの女」組曲に登場する有名な「メヌエット」が、実は劇音楽「アルルの女」ではなく、オペラ「美しきパースの娘」の曲だったというのもおもしろい話です。これは組曲を編んだビゼーの盟友ギローの功績と言えるでしょう。ギローの大胆なアイディアが光っています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ゲーム音楽を和楽器で奏でる音楽会

投稿日:2026年01月10日 10:30

 今週は三味線奏者の本條秀慈郎さんら精鋭たちが集った日本の伝統音楽演奏家集団J-TRAD Ensemble MAHOROBAの演奏で、ゲーム音楽の名曲をお楽しみいただきました。ゲーム音楽と日本の伝統音楽の組合せは一見、不思議に思えますが、本條さんは「歌による言葉で語る」日本の伝統音楽と、音楽が物語の背景を支えるゲーム音楽は、相通じるところがあると言います。
 今回、とりあげられた「ファイナルファンタジーXIII」「クロノトリガー」「ファイナルファンタジーVII」は、90年代から00年代にかけてリリースされたロールプレイングゲームの名作です。オリジナルを遊んだ方もいれば、リメイク版で知ったという方も大勢いることでしょう。ゲーム本編のみならず、その音楽も長く聴き継がれています。
 和楽器で演奏すると、どんな音になるのか、実際に聴くまではまったく想像がつきませんでしたが、思いのほか明るく華やかな響きが生み出されているのには驚きました。丁々発止のアンサンブルはスリリング。とてもフレッシュな音楽になっていたと思います。
 浜渦正志作曲「ファイナルファンタジーXIII」より「閃光」では、プレーヤーを鼓舞するような尺八と、エネルギッシュな三味線、色彩的な箏が戦闘シーンの躍動感を表現していました。
 光田康典作曲「クロノトリガー」より「風の憧憬」では新しい擦弦楽器「近江胡弓」を使用して、ノスタルジーを喚起します。タイムトラベルを能楽の手法で表現したという冒頭部分はカッコよかったですよね。同じく「クロノトリガー」より「時の回廊」では、さまざまな楽器がテーマをくりかえします。透明感が感じられる編曲でした。
 植松伸夫作曲「ファイナルファンタジーVII」の「片翼の天使」は名曲中の名曲。決戦の音楽ということで、力強く緊迫感にあふれたサウンドがくりひろげられます。荘厳さが際立っていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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