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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2025 オーディション編

投稿日:2025年08月30日 10:30

 オーケストラと共演する夢をかなえる「夢響」が今年も開催されます。今回はそのオーディションの模様をお届けしました。オーディションには書類選考により選ばれた約100名が参加。審査員はチェリストの宮田大さんと指揮者の田中祐子さんです。オーディションの結果、8名の合格者が選ばれました。
 偶然ですが、フルートの小針梓さんとピッコロの小松有更さんが選んだのは、ハチャトゥリアン(ランパル編曲)のフルート協奏曲。この曲、原曲はヴァイオリン協奏曲ですが、名フルート奏者ランパルの編曲でフルート協奏曲としても親しまれています。フルートの小針さんは第1楽章、ピッコロの小松さんは第3楽章を演奏します。
 ホルンの山路樹里さんが選んだのは、リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番。この曲は本当にカッコいいですよね。第1楽章の冒頭はしびれます。
 歌の大塚敦司さんが選んだのはプッチーニの「だれも寝てはならぬ」。パヴァロッティに憧れての選曲ですが、よくわかります。パヴァロッティの「だれも寝てはならぬ」は最高でした。
 チェロの松村皐生さんは小学3年生。フォーレの名曲「エレジー」を演奏してくれました。この大人びた選曲からしてすばらしいのですが、演奏からも熱い気持ちが伝わってきます。
 オーボエの伊藤由貴さんは高校3年生。オーボエは難しい楽器の筆頭格に挙げられますが、「難しい楽器というイメージは持っていない」と語ってくれました。見事な音色でした。
 ピアノの春木穏流さんは小学4年生。昨年は観客席で久保壮希さんの応援団を務め、今回は自身が「夢響」に参加することになりました。今までにない熱い展開です。
 指揮でエントリーしたのは高校2年生の立花輝さん。審査の田中さんのリクエストにこたえて、ピアノでリストの超絶技巧練習曲第1番を弾いたことで、道が開けました。音源に合わせて指揮棒を振るだけではわからない、音楽への向き合い方が伝わったのでしょう。夢の実現まで、あとわずかです!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会~アンコール 後編

投稿日:2025年08月23日 10:30

 今週は先週に引き続きまして、「山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会」アンコール放送の後編をお届けしました。スペシャル・アドバイザーであるチェロの宮田大さん、ホルンの福川伸陽さんという日本を代表する名手たちも加わり、練習を通してオーケストラがどんどん変わっていく様子が映像から伝わってきました。
 山田和樹さんがリハーサル中に目標として掲げたのは「自分にしか出せない音を出すこと」「このメンバーでしかできない音楽をすること」。ドヴォルザークの「新世界より」の部分では、第1ヴァイオリンに対して「個性を出してほしい」と求めると、ぐっと生き生きとした表情の音楽が返ってきました。具体的にどう弾くかという指示はないのですが、子どもたちがしっかりと言葉を受け止めて、音楽として表現してくれるのがすばらしいと思いました。ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」の部分で山田さんが求めたのは「胸キュン」。山田さんのアドバイスによって、格段に情感豊かな音楽が湧き出してきます。
 本番の演奏は東京藝術大学の奏楽堂で行われました。曲は上田真樹さん編曲の「クラシックのおもちゃ箱」。クラシックの名曲が次々とメドレーで登場します。客席でこの演奏を聴きましたが、冒頭からすごい音が出てきたのにはびっくり。一期一会にかけるみんなの思いがひとつになっていて、まさしく「このメンバーでしかできない音楽」だったと思います。
 サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」の部分ではソロの奪い合いをする趣向まで飛び出します。この緊張感のある状況で、こんなに楽しいことをやってのけるとは。山田さんが大好きだというガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」の部分では、とても甘美で、ノスタルジーに満ちた音楽が奏でられました。ラヴェルの「ボレロ」によるエンディングは感動的。子どもたちが切り拓く未来は、きっと輝かしいものになるにちがいありません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会~アンコール 前編

投稿日:2025年08月16日 10:30

 今年1月と2月に4週にわたって放送した「山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会」は、第62回ギャラクシー賞優秀賞と第51回放送文化基金賞エンターテインメント部門最優秀賞を受賞しました。今週よりアンコール放送といたしまして、本企画を特別編集版で2週に凝縮してお送りいたします。
 未来オーケストラのオーディションには書類選考を経た104人が参加しました。山田さんは長時間のオーディションに立ち会った結果、「落とす人が見当たらなかった」と言い、全員を合格させます。
 104人ともなれば、オーケストラとしてもかなりの大編成。全員が参加できる曲が必要になりますが、パートによって人数はばらばら。そこで、通常の第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンに加えて第3ヴァイオリンを設けるなど、このオーケストラのための特別な編曲が用意されました。
 全体練習にあたっては、事前にメンバー全員に山田さんから手紙が送られています。そこにはメンバーへのリクエストがいくつか記されていました。たとえば、指揮者を「先生」と呼ばないこと。教える側と教わる側の一方的な関係を築くのではなく、ともに音楽を楽しむことを大切にしたいというのです。
 練習中には、譜面台にメンバーそれぞれのニックネームが貼られ、山田さんは盛んにメンバーたちとのコミュニケーションをとっていました。「今日どこから来たん?」とメンバーに尋ね、地元にまで届く音を求める場面は印象的。音量がほしいのではなく、音にメッセージ性がほしいという難しいリクエストでしたが、子どもたちはそれぞれに反応して、生き生きとした表情を持った音を返してくれます。
 指揮棒に合わせて拍手をする練習をした後の、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」もおもしろかったですね。山田さんの自在の棒にぴたりとメンバーがついてきて、みんながひとつになっている様子が伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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日本版キャストが歌う!ディズニーの音楽会

投稿日:2025年08月09日 10:30

 今週はディズニーの名曲をそれぞれの日本版キャストのみなさんに歌っていただきました。共演は角田鋼亮指揮東京フィル。オーケストラのためのスペシャルアレンジによる演奏です。
 『ミラベルと魔法だらけの家』より「奇跡を夢みて」を歌ってくれたのは斎藤瑠希さん。いとこのアントニオが魔法を授かったときに、ミラベルが感情を爆発させる場面で歌われます。ミラベルが味わう疎外感がドラマティックな曲想で表現されます。斎藤瑠希さんの輝かしい声に厚みのあるオーケストラのサウンドが加わって、大きなうねりを生み出していました。
 実写版『白雪姫』の劇中歌「夢に見る~Waiting On A Wish~」を歌ったのは吉柳咲良さん。白雪姫が邪悪な女王により変わり果てた王国を憂い、自分にどうにかできないかと葛藤する場面で歌われます。ハープが白雪姫の優しさだけではなく、強さも表現するというお話がありましたが、決然とした曲調からも白雪姫が強いハートを持った、今の時代にふさわしいプリンセスであることが伝わってきます。
 『ライオン・キング:ムファサ』より「聞かせて」では、ムファサ役の尾上右近さんとサラビ役のMARIA-Eさんのおふたりが登場。秘めていた互いの思いを伝え合う場面で歌われます。サバンナの雰囲気を表現するマリンバをはじめ、オーケストラのさまざまな楽器が活躍して、広大な大地を描きます。尾上右近さんのリリカルな声、MARIA-Eさんの豊かで深い声がオーケストラと溶け合って、ゴージャスな音色を作り出していました。
 『ノートルダムの鐘』でカジモド役を歌ったのは石丸幹二さん。ヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」を原作とした名作です。「僕の願い」では、大聖堂の鐘楼で孤独に暮らすカジモドの内面が歌われます。石丸幹二さんの温かみのある声は、純真なカジモド役にぴったり。精彩に富んだオーケストレーションとあいまって、すばらしい高揚感にあふれていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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名指揮者の考察シリーズ!ボレロはなぜ繰り返すのか?を探る音楽会

投稿日:2025年08月02日 10:30

 今週は「名指揮者の考察シリーズ」。角田鋼亮さんにラヴェルの「ボレロ」について考察していただきました。
 ラヴェルの「ボレロ」は1928年の作曲。ラヴェルの代表作であるばかりか、フランス音楽屈指の人気曲として親しまれています。この曲はもともとはバレエのための音楽として作曲されました。スペイン風のバレエ音楽を書いてほしいと頼まれたラヴェルは、当初、スペインの作曲家アルベニスのピアノ曲「イベリア」をオーケストラ用に編曲しようと考えていました。ところが編曲の権利を巡る問題から計画が頓挫し、代わりに急遽オリジナルの作品を書くことに決めます。こうして短期間で完成されたのが「ボレロ」。延々と同じメロディをくりかえすこの曲は多くのオーケストラから演奏を拒否されるだろうと作曲者は考えていました。ところが、実際の反応は正反対。「ボレロ」は大成功を収め、各地のオーケストラがこぞって演奏する人気曲となったのです。
 指揮者の角田鋼亮さんは、「ボレロ」のくりかえしは人間の一生を表現したものだと考察します。スネアドラムが反復するリズムにベートーヴェンの「運命」の動機のリズムを読み取り、人が抗うことのできない運命のレールが敷かれていると解します。2つのメロディが表すのは、ひとつは「平穏な日常」、もうひとつは「変化と刺激」。なるほど、両者の交替は人生そのものです。曲の終盤の転調で高みに到達し、タムタムとともに人生の終着点を迎えます。とても説得力のある解釈だと思いませんか。
 こういった角田さんの解釈は、東京フィルの演奏にもしっかりと反映されていたと思います。前へ前へと進むエネルギッシュな演奏は、まさしく止まることのない人生。情熱にあふれた力強い「ボレロ」に圧倒されました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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