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3曲でクラシックがわかる音楽会~モーツァルト編~

投稿日:2024年01月27日 10:30

 今週は新シリーズ「3曲でクラシックがわかる音楽会」のモーツァルト編。モーツァルトの天才性はどこにあるのか、鈴木優人さんに解説していただきました。優人さんが注目したのは短調の作品。モーツァルトの曲の大半は長調で書かれているのですが、数少ない短調の曲はとびきりの名曲ばかり。そんな短調の傑作を集めてみました。
 モーツァルトはたくさんのピアノ・ソナタを残していますが、短調の曲は2曲だけ。その内の1曲が、優人さんがフォルテピアノで弾いてくれたピアノ・ソナタ第8番イ短調です。ピアノ学習者の方には、この曲を練習したことのある方もいらっしゃるでしょう。とても悲劇的なムードで始まるのですが、さっと明るい光が差し込むようなところもあり、さまざまな表情が生まれてきます。短調と長調の間を自在に行き来しながら、陰影に富んだ音楽を作り出すのがモーツァルトならでは。
 オペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」では、限界を超えるような高音が求められます。「魔笛」で描かれるのはメルヘンの世界。こういったアリアから、夜の女王がふつうの人間とは違う存在だということが伝わりますよね。夜の女王は、娘が邪悪なザラストロにさらわれてしまったと主人公に助けを求めるのですが、やがて主人公はザラストロが賢者であることを知ります。そしてザラストロの神殿で試練を乗り越えることで、夜の女王の娘と結ばれます。物語の背景には夜の女王とザラストロの対立関係があり、前者を夜、闇、陰、後者を昼、光、陽のシンボルとして解釈することもできるでしょう。モーツァルトの音楽はこういった独特の世界観を反映しています。
 交響曲第40番ト短調はモーツァルトが晩年に書いた傑作です。晩年といっても、モーツァルトは35歳で世を去っていますので、まだ32歳と若いのですが、簡潔なモチーフからこんなにも豊かな感情表現を伴う作品が生まれるとは。これはもう熟練した巨匠の技というほかありません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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クイズ!有名作曲家のひねりすぎた名曲の音楽会

投稿日:2024年01月20日 10:30

 今週は古坂大魔王さんと川島素晴さんのコンビによる「ひねりすぎシリーズ」をクイズ形式でお届けしました。有名作曲家の意外な一面に触れることができたのではないでしょうか。
 ハイドンの交響曲第94番は「驚愕」のニックネームで知られています。このニックネーム自体がある意味ネタバレとも言えるのですが、わかっていてもやっぱりびっくりするのが第2楽章。静かでゆったりとした曲調から突然、フォルティッシモの一撃が鳴り響きます。一般的に交響曲は4つの楽章で構成され、第2楽章には遅いテンポの穏やかな曲がくるもの。そのお約束を逆手に取った趣向なんですね。ハイドンはこういった聴衆を喜ばせる趣向が大好きな作曲家でした。
 サン=サーンスの名は組曲「動物の謝肉祭」でよく知られています。少年期より神童ぶりを発揮し、19世紀フランス音楽界で主導的な役割を果たしました。音楽以外の教養もたいへんに豊かだったそうですが、「動物の謝肉祭」を聴くとやや辛辣なユーモア・センスの持ち主だったのかなという印象も受けます。オッフェンバックの「天国と地獄」を超スローモーションバージョンにして「亀」と名付けたり、「ピアニスト」と題してあえてヘタに演奏させてみたり。ちなみにサン=サーンス本人は卓越したピアニストとして知られていました。若き日のアルフレッド・コルトー(後の大巨匠)に「君の楽器は?」と尋ね、コルトーが「ピアノです」と答えたところ、「その程度でピアニストになれるの?」と返した逸話が知られています。
 フランチェスコ・フィリデイは、1973年、イタリア生まれの現代の作曲家です。「錯乱練習第1番」では風船が破裂する音にドキドキしましたね。
 ハインツ・ホリガーは1939年、スイス生まれ。オーボエ、指揮、作曲、そのすべての分野で実績を残す音楽界の巨人です。ホリガーの「Psalm(プサルム)」は息だけで表現される作品。口から漏れる摩擦音や不規則な吐息、言葉にならない音から、閉塞感や切迫感が伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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裸足のピアニスト〜アリス=紗良・オットの音楽会

投稿日:2024年01月13日 10:30

 今週はドイツのミュンヘン出身のピアニスト、アリス=紗良・オットさんをお招きしました。ドイツと日本にルーツを持つアリスさんは、クラシック音楽界で早くから注目を集め、世界各地で意欲的な活動を展開しています。これまでに来日公演も多数行っていますので、ライブでお聴きになったことのあるかたもいらっしゃるかと思います。クラシックの老舗レーベル、ドイツ・グラモフォンの専属アーティストとして、さまざまなアルバムをリリースしてきました。
 古典から現代まで多彩なレパートリーに挑むアリスさんですが、独自の切り口を持ってプログラムを組み立てるのがアリスさんの魅力。特にアルバム「エコーズ・オブ・ライフ」にはその特徴がよくあらわれています。ショパンの「24の前奏曲」の合間にさまざまな現代曲がおりこまれているのです。これら現代曲には、今回演奏してくれたチリー・ゴンザレスのようなジャンルを超越した音楽家の作品もあれば、20世紀の前衛を代表するリゲティだったり、映画音楽の巨匠ニーノ・ロータや、日本の武満徹の作品も含まれていて、時代も地域も実に多彩。それでいて、アルバム全体がひとつの作品のように感じられるのが、おもしろいところでしょう。
 今回は、そのチリー・ゴンザレスの前奏曲とショパンの前奏曲「雨だれ」が続けて演奏されました。「雨だれ」は有名な曲ですが、先にチリー・ゴンザレスを聴くことで、また普段とはちがった新鮮な気持ちで聴くことができたのではないでしょうか。チリー・ゴンザレスの前奏曲は、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の前奏曲ハ長調に触発されています。実はショパンもバッハの平均律クラヴィーア曲集に触発されて前奏曲集を書きました。両曲にはバッハという共通項があるんですね。
 アリスさんは「雨だれ」を自然へのオマージュととらえ、「暗い雲と嵐が襲って来るけれど、嵐が去った後に現れるのは、もとの世界ではない」と語っていました。短い小品のなかにとても大きなドラマが描かれていたと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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世界で活躍するトップピアニストたちから届いた!ニューイヤーメッセージ 2024

投稿日:2024年01月06日 10:30

 今週は世界各地で活躍するトップピアニストたちからのニューイヤーメッセージを演奏とともにお届けしました。辻井伸行さんはハワイから、反田恭平さんはウィーンから、角野隼斗さんはパリから、ドイツに留学中の亀井聖矢さんは一時帰国中の日本からメッセージを寄せてくれました。さらにアイスランドのヴィキングル・オラフソンさんが来日公演の合間を縫って登場! 豪華メンバーがそろいました。
 辻井さんが演奏したのはカプースチン作曲の「8つの演奏会用エチュード」より第1曲「プレリュード」。カプースチンはジャズの語法とクラシックの形式を融合させた独自の作風で知られる作曲家です。躍動感があって、カッコよかったですよね。
 角野隼斗さんはアイルランド民謡「ダニー・ボーイ」をアップライトピアノで演奏。といっても、普通のアップライトピアノではありません。ハンマーと弦の間にフェルトをはさんで、柔らかく幻想的な音色を作り出していました。
 ヴィキングル・オラフソンさんは、世界がもっとも注目するピアニストのひとり。古典にも現代作品にも取り組み、創造的な視点から作品をとらえ直す新世代の旗手です。ワールドツアーではバッハの傑作「ゴルトベルク変奏曲」を演奏して絶賛されました。「ゴルトベルク変奏曲」は全曲で1時間をゆうに超える大曲なのですが、その最初と最後に演奏されるのが、今回の「アリア」。いわば音楽の旅の出発点でもあり終着点でもあるような曲と言えるでしょうか。簡潔ながらもバッハの魅力が凝縮されていました。
 亀井聖矢さんが演奏してくれたのはリストの「ラ・カンパネラ」。鮮やかな技巧とパッションが一体となった見事な演奏で、思わず「ブラボー!」と叫びたくなります。
 反田恭平さんが選んだのはショパンの「猫のワルツ」。ショパンといえば「小犬のワルツ」が有名ですが、「猫のワルツ」もあるんですね。なるほど、言われみれば途中の部分で鍵盤の上を猫がはしゃぎ回っているような? 楽しくて華やかなワルツでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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