今週はディズニー初の公式アカペラ・グループ、ディカペラのみなさんにディズニー・ソングをたっぷりと歌っていただきました。さすが全米からオーディションで選ばれた7名とあって、すばらしい声と技術、そして表現力。2017年、ディズニーがアカペラ・グループを結成するためにオーディションを行なうと発表したところ、1500名を超える応募者があったとか。応募者はまずYouTubeにビデオを投稿し、その後選ばれたメンバーが対面オーディションに進むという方式。さまざまなバックボーンを持った人々が参加したオーディションは、全米で大反響を呼んだといいます。
ディカペラはアカペラ・グループですので、リズムパートも含めてすべてのパートを声で再現します。これがすごいですよね。しかも、番組冒頭の「アナと雪の女王」では、「レット・イット・ゴー」と「雪だるまつくろう」のふたつの名曲が巧みにミックスされていました。声の超絶技巧と言ってもいいでしょう。
ソロだけでも聴きごたえがあるのですが、7人全員がそれぞれの役割を担って、全員で緻密な音楽を生みすところがディカペラの魅力。特にボイス・パーカッションのアントニオのテクニックには脱帽するしかありません。まさか三味線にまでチャレンジしてくれるとは!
「美女と野獣」では、日本語歌唱にも挑戦してくれました。ただカタカナを英語で読み上げた日本語ではなく、歌詞に込められた思いがしっかりと伝わる日本語になっていたのには感嘆するばかり。アルトのソジャーナが言っていましたが、「一緒にみつめよう」の「つ」が英語にない音だから難しいというのは、日本人にはなかなかわかりませんよね。
こうして次々とディズニーの名曲を聴いてみると、いかに音楽が物語に大きな役割を果たしているかを痛感せずにはいられません。どの曲にも、一瞬でディズニーの世界へ引き込んでくれる力強さを感じます。
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ディズニー・ソングをアカペラで歌う音楽会
高嶋ちさ子ともっともっと売れたい!スーパーチェロ7の音楽会
昨年「イケメンチェロ軍団」と銘打って出演したスーパーチェロ7。放送終了時に「イケメンはどこだ?」と視聴者からお叱りを受けてしまったという「伝説」が暴露されていましたが、メンバーはそれぞれ日本のトップレベルで活躍する名手ばかり。東京都交響楽団の首席奏者である古川展生さんをはじめ、凄腕プレーヤーたちが集まっています。
そんな名手たちが、高嶋ちさ子さんの号令ひとつでさまざまな技にチャレンジしてくれたのが今回の見どころ。4人で一台のチェロを弾く「水戸黄門」のテーマなど、無駄に難度の高い技に思わず笑ってしまいました。超高速版「くまんばちの飛行」は圧巻。ヴァイオリンの早弾きで耳にする機会が多い曲ですが、とてもチェロとは思えない軽快さでした。
さらにチェロの立奏まで飛び出しましたが、これにはびっくり。チェロって、立って弾けたんですね。最近、クラシック音楽界では「立って弾く」というのが軽くトレンドになっています。バロック・アンサンブルなどではヴァイオリンやヴィオラは立って演奏するのが一般的ですし、話題の鬼才クルレンツィスが指揮するムジカエテルナではチェロ以外の弦楽器はみんな立って演奏します。でも、そんなオーケストラでも、チェロはやっぱり座って演奏するんですよね。この楽器はどうしても立てない……と思っていたら、あっさりと常識が覆されました。チェロの立奏付きで演奏された、高嶋さんとスーパーチェロ7のピアソラ「リベルタンゴ」は最高にカッコいい音楽でした。エルガー「威風堂々」で、チェロが全員立ち上がった場面は壮観。でも、腰が痛くなりそう……。
最後はベートーヴェン「歓喜の歌」を、8人だけで演奏するという思い切ったアレンジ。原曲はオーケストラに大合唱が加わる重厚にして壮大な作品ですが、ぐっと親密な雰囲気のベートーヴェンに生まれ変わっていました。
3大テノールの再来!今世界が注目するイタリアイケメン3人組の音楽会
今週はイタリア出身の若き3人組ポップスオペラ歌手ユニット、イル・ヴォーロのみなさんをお招きしました。石丸幹二さんも加わっての「マイ・ウェイ」、実に聴きごたえがありましたね。
イル・ヴォーロがデビューしたのは2009年のこと。イタリアのテレビ局RAIのオーディション番組がきっかけです。結成当時、メンバーは14歳から15歳の少年たち。世界に羽ばたくように、イタリア語で「飛ぶこと」を意味する「イル・ヴォーロ」と名付けられたんだそうです。そして、彼らは人気ボーカル・ユニットに育ち、その名の通り世界中を飛び回っています。
イル・ヴォーロにとって、モデルとなったのは「三大テノール」でしょう。ドミンゴ、パヴァロッティ、カレーラスという当代一流のオペラ歌手たちが、1990年、サッカーのワールドカップ・イタリア大会を機に一堂に会してコンサートを行ったところ、これが爆発的な人気を呼び、「三大テノール」という呼称が定着しました。当時、主役級テノール歌手を3人集めるというアイディアは、型破りで斬新なものだったのです。
本家「三大テノール」がそうだったように、イル・ヴォーロも同じテノール同士でありながら、メンバーそれぞれに異なる声のキャラクターを持っています。画面に向かって左のジャンルカはリリカルで硬質な美声。声質も「イケメン」といった感じがします。中央のイニャツィオは明るくのびやかな声で、無理なくスッと高音が伸びてゆくのが魅力。右のピエロは輝かしく張りのある情熱的な声。オペラだったらヒロイックな役柄が似合いそうです。
歌のすばらしさに加えて、3人の陽気な人柄も印象的でした。気取りがなく、若者らしい打ち解けた雰囲気があって、日本語にチャレンジするなど好奇心も旺盛。こういったところは、いかにも今風のスターだなと感じます。
七夕の音楽会
七月七日は織姫と彦星が一年に一度だけ会うことができる七夕。でも知っているようで知らないのが七夕です。今では主に子供たちが短冊に自由に願い事を書く日になっていますが、もともとは「芸事・習い事の上達をお願いする日」という意味合いがあったんですね。
七夕といわれてまっさきに思い出す唱歌が「たなばたさま」。作曲者の下総皖一は、日本近代音楽の発展に大きな役割を果たしたことで知られています。1898年生まれ、ベルリン音楽大学でヒンデミットに師事し、作曲家としてのみならず、『和声学』『対位法』など理論書の分野でも功績を残しました。とてもたくさんの校歌を作曲していますので、母校の校歌が下総皖一作曲だったという方もいらっしゃるかもしれません。
西洋に七夕はありませんが、星にちなんだ曲はたくさん書かれています。城宏憲さんが歌った「星は光りぬ」もそのひとつ。プッチーニが作曲した人気オペラ「トスカ」の名場面です。「トスカ」は恐怖政治下のローマを舞台とした悲劇。画家カヴァラドッシとその恋人である歌手のトスカの過酷な運命が描かれます。物語の終盤で、まもなく銃殺刑になるカヴァラドッシが、明け方の星を見上げて、恋人との甘いひとときを思い出しながら、絶望に打ちひしがれて「星は光りぬ」を歌います。城さんの輝かしい美声はカヴァラドッシにぴったり。よくフィギュアスケートなどでも使われる名曲です。
モーツァルトのオペラ「魔笛」では、夜の女王という神秘的な役柄が登場します。このオペラはメルヘン仕立てになっていますが、筋立てにはモーツァルト自身も属していた友愛結社フリーメーソンの教義が反映されているといわれています。ここで描かれる光と闇の二元論的な世界で、闇に属するのが夜の女王。超自然的な存在だけに、歌唱も人間離れした超絶技巧が求められます。高橋維さんの夜の女王のアリア、本当にすごかったですよね。