今週は宮田大さんにチェロの魅力をたっぷりと伝えていただきました。
チェロにもストラディヴァリウスの名器があることに、驚かれた方も多かったのではないでしょうか。ストラディヴァリウスといえばヴァイオリンをまっさきに思い出しますが、実はヴィオラやチェロ、ギターなどもあります。ただ、ストラディヴァリウスのチェロは、ヴァイオリンに比べると、ほんの少ししかありません。希少価値が高く、オークションなどでは大変な高額で取り引きされることになります。
チェロでもヴァイオリンでもそうですが、歴史的な名器の価格が高騰した結果、もはや音楽家が個人で購入できるような価格ではなくなったため、財団や企業が所有して「この人こそ名器にふさわしい!」と見込んだ奏者に貸し出すケースが増えてきました。当番組の以前の司会者、五嶋龍さんのストラディヴァリウスも、財団から貸与されたもの。若い奏者が歴史的名器を使っている場合は、ほとんどがこのような貸与だと思います。逆に言えば、貸与されることは一流奏者の証であると言えるでしょう。
チェロは高機能な楽器でもあります。音域の広さのみならず、特殊奏法を含めた多彩な表現力を持っています。黛敏郎作曲の「BUNRAKU」はまさにその好例。太棹三味線や大夫の語りを模すという作曲者の大胆な発想がすごいですよね。「チェロは人間の声に近い」とはよく言われますが、まさかあんなふうに語りを音楽に昇華できるとは!
エルガーのチェロ協奏曲は、古今のチェロ協奏曲のなかでも屈指の名曲です。チェロ協奏曲はやはりヴァイオリン協奏曲に比べると数が少ないのですが、エルガー、シューマン、ドヴォルザーク、サン=サーンスらが傑作を残しています。エルガーの音楽の魅力は、その高貴さ。威厳と気品、そして情熱とロマンティシズムが全編にあふれています。宮田さんのスケールの大きなソロがすばらしかったですね。
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チェロの魅力を知る音楽会
ショパン通になれる休日
ショパンの曲はだれもがどこかで耳にしているはず。でも、知られているようで意外と知られていないのがショパン。今週の「ショパン通になれる休日」では、日本を代表する「ショパン弾き」である横山幸雄さんから、ショパン通になるための近道を伝授していただきました。
フレデリック・ショパンは1810年、ポーランド生まれ。といっても、お父さんはフランスの出身です。若くしてポーランドに移住し、この地に根をおろして暮らしました。息子には「フレデリック」とフランス風の名前を付けたものの、「自分はポーランド人である」という意識を生涯にわたって持ち続けたといいます。
一方、ショパンはポーランドに生まれ、やがて音楽家として頭角をあらわすと、フランスへと移りました。音楽家としての成功のためには大都会パリで名をあげることが必要だったのです。パリの社交界のセレブとなったショパンですが、彼がポーランド人としてのアイデンティティを大切にしていたことは、ポロネーズやマズルカといったポーランドの民族舞踊に由来する作品をたくさん書いたことでも明らかでしょう。とりわけ、ショパンが愛着を持っていたのがマズルカ。番組内でもご紹介したように、ショパンの全作品中、なんと約4分の1がマズルカなのです。
横山幸雄さんは1990年のショパン国際ピアノ・コンクール入賞以来、トップレベルで活躍を続ける名手です。2010年には「ショパン・ピアノ独奏曲 全166曲コンサート」を行い、ギネス世界記録に認定されました。今年5月には、ピアノ独奏曲だけではなく、室内楽や歌曲なども含めて、ショパンが39年の生涯で残した計240曲を、3日連続公演で演奏して話題を呼びました。ほとんど超人的な快挙といってもいいでしょう。
こういった企画が成立するのも、ショパンの作品が傑作ぞろいだからこそ。ショパンは「通」になりがいのある大作曲家だと思います。
83歳の指導者と少年少女オーケストラの音楽会
今週は先週に引き続きまして、佐治薫子さんが音楽監督を務める千葉県少年少女オーケストラの演奏をお届けいたしました。情熱とバイタリティにあふれる佐治さん。とても83歳には見えません。
佐治さんは小学校を定年退職してから、千葉県少年少女オーケストラの音楽監督に就任しました。それで、あのハイレベルなオーケストラを育て上げたというのですから、驚かずにはいられません。
佐治さんが挙げていた3つのポイントは、「よい演奏はしつけから」「できても練習」「仲間と一体になる」。音楽監督である以前に、まず教育者であることがよくわかります。オーケストラのメンバー全員で「ラ」の音を声で発してから、楽器のチューニングに取り組むというアイディアはおもしろかったですよね。これは明日からでもまねできそうな練習法です。
今回演奏されたのはすべて伊福部昭の作品でした。伊福部昭といえば、だれもが知るのが「ゴジラ」のテーマ。現在映画館で公開中のハリウッド版ゴジラ「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のなかでも、伊福部昭の音楽が使用されています。
「日本組曲」を書いた当時、伊福部昭は北海道帝国大学(後の北海道大学)農学部に在籍する19歳の若者でした。原曲はピアノ曲です。今回お聴きいただいたのは、後年、オーケストラ用に編曲したバージョンです。
北海道生まれの伊福部昭は、よく土俗的な作曲家だと言われます。「日本組曲」の「盆踊」「七夕」「佞武多(ねぶた)」では、作曲者が過ごした北海道や旅で訪れた青森の風習が題材となっています。また、「シンフォニア・タプカーラ」は、少年時代に触れたアイヌの文化に触発された作品です。
土地に根ざした伊福部昭の音楽が、遠く離れた千葉県の少年少女たちによって演奏される。名曲とはこうして受け継がれてゆくものなんでしょうね。
日本最高峰!少年少女オーケストラの音楽会
千葉県少年少女オーケストラは10歳から20歳までの団員約160名で構成されるオーケストラ。少年少女オーケストラながら、マルタ・アルゲリッチ、クリスティアン・アルミンクといった世界的な音楽家たちと共演しているのですから、驚かされます。設立は1996年。都道府県レベルでは全国初の少年少女によるオーケストラなんだそうです。演奏はアルミンクさんが語っていたように「プロ顔負け」。井上道義さんとともにショスタコーヴィチの交響曲第1番を演奏していましたが、選曲も大人のオーケストラと変わりません。
ショスタコーヴィチは20世紀のロシアで活躍した作曲家。交響曲第1番は19歳で書かれ、大評判を呼びました。ショスタコーヴィチはまだ音楽院の学生でしたが、「モーツァルトの再来」と呼ぶ声もあったほど。当時、ロシアはソビエト連邦という一党独裁の共産主義体制のもとにありました。この国では芸術家の表現は国家によって厳しく管理されていました。体制を賛美する作品が求められ、社会批判につながる作品を書くと粛清されてしまう。ショスタコーヴィチは困難な環境のなかで、国家の要請と芸術家の良心の間で葛藤しながら、創作活動を続けた作曲家です。ショスタコーヴィチの音楽は、そんな不自由さと切っても切れない関係にあります。
一方、モーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」には自由な空気が漂っています。こちらは21歳で書かれた作品。後の成熟期を先取りするような充実した傑作で、創意に富み、すみずみまで生命力にあふれています。しかも、小曽根さんは原曲にアドリブを加えたり、ジャズ風のカデンツァを挿入するなど自由自在。おそらく作曲当時のモーツァルトも、演奏するたびに違った弾き方をしていたはず。小曽根さんの生き生きとした表情も印象的でした。オーケストラの若いメンバーたちに大いに触発されたのではないでしょうか。
ウェディング協奏曲の音楽会
今年3月に「卒業ソングが交響曲になった!卒業シンフォニーの音楽会」を放送しましたが、今回は「ウェディング協奏曲の音楽会」。もしも結婚式の定番ソングをクラシックの大作曲家たちが協奏曲にしたら……という設定で遊んでみました。アイディア満載の編曲は萩森英明さん。
交響曲に一定の基本的なフォーマットがあるように、協奏曲にもおおまかな決まりごとがあります。原則として交響曲は4つの楽章からなるのに対して、協奏曲は3つの楽章で構成されます。そして、交響曲はオーケストラだけで演奏されますが、協奏曲はソリストとオーケストラの共演によって演奏されます。両者が協力して音楽を作るから「協奏曲」。鈴木優人さんもおっしゃっていましたが、結婚するふたりがひとつの家庭を作る様子にたとえられるかもしれません。また、協奏曲には「カデンツァ」と呼ばれる、ソリストがひとりで演奏する見せ場があります。
第1楽章はオルガン協奏曲。石丸由佳さんがソリストとして登場し、東京オペラシティコンサートホールが誇るパイプオルガンを演奏してくれました。テーマは「もしもバッハが安室奈美恵の CAN YOU CELEBRATE? を作ったら」。バッハが得意としたフーガも出てきました。
第2楽章はチェロ協奏曲で。小澤征爾さんをはじめ、世界的な名指揮者たちとの共演も多い宮田大さんがソリストを務めてくれました。テーマは「もしもワーグナーがいきものがかりの『ありがとう』を作ったら」。本来はぜんぜん違う2曲が、絶妙の編曲で合体していたのがおかしかったですね。宮田さんのカデンツァは鮮やか。
最後の第3楽章はヴァイオリン協奏曲で。こちらのテーマは「もしもメンデルスゾーンがドリカムの『あなたとトゥラッタッタ♪』を作ったら」。辻彩奈さんの輝かしいヴァイオリンの音色とキレのあるテクニックには感嘆するばかり。遊びは本気でやってこそおもしろいのだということを思い知らされた気分です。