今週は番組2700回放送を記念する3週連続スペシャルの第3弾。今回は「新たな音楽の発掘を楽しむ企画」をテーマにお届けしました。
葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」で一躍脚光を浴びたのがヴァイオリニストの林周雅さんです。番組を見た反田さんからコンサートツアーのメンバーに招かれたり、原田慶太楼さんから東京交響楽団の演奏会に呼ばれるなど、引く手あまたの人気ぶりです。葉加瀬さんに見出されてポップスのほうに行ってしまうのかと思えば、クラシックでも着実に活動の場を広げる林さん。ポップスでもクラシックでも第一線で活躍できるヴァイオリニストへと大きく育ってくれることでしょう。
「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン~タイタニック・愛のテーマ~」では、Toshlさん、石丸幹二さんのヴォーカルに、林さんのヴァイオリン、山中惇史さんのピアノ、宮田大さんのチェロが加わるという夢の共演が実現しました。Toshlさんの輝かしい声と石丸さんの温かみのある声がひとつに溶け合うと、絶妙な音色が生まれてきます。映画「タイタニック」主題歌としてセリーヌ・ディオンが歌って大ヒットを記録した曲ですが、映画の公開は1997年ですので、もう24年も前になるんですね。古びることのない名曲だと思います。
7人制吹奏楽「ブリーズバンド」は番組発の新しいスタイルの吹奏楽。7人だからこそ、全員が主役になれるのが特徴です。大人数で演奏するばかりが吹奏楽ではありません。今から約100年前、第一次世界大戦とスペイン風邪の影響でヨーロッパの音楽界が苦境に立たされた際、作曲家ストラヴィンスキーは7人編成の小アンサンブルと朗読、ダンサーで上演可能な「兵士の物語」を作曲しました。これは感染対策というよりは経済的に可能な小編成を意図したものですが、たまたま7人という人数はブリーズバンドと同じ。「兵士の物語」が時代を超える名曲になったように、ブリーズバンドもパンデミックを超えて発展する可能性を持っているのではないでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)