今週はドリーム・デュオ企画の第3弾。名手たちによる多彩なデュオが実現しました。
最初の一組は遠藤真理さんのチェロと金子三勇士さんのピアノによる正統派デュオ。チェロとピアノのための曲はたくさんありますが、今回はドビュッシーの「月の光」をデュオで演奏していただきました。本来「月の光」はピアノのみで演奏される曲。それをあえて、チェロとピアノのデュオで演奏したわけです。原曲ではピアノのきらきらとした音色が月光を思わせますが、伸びやかなメロディを奏でるチェロが加わって、ぐっと温かみのある曲想に感じられました。
2組目は、なんと津軽三味線とパイプオルガンのデュオ。これは通常なら絶対にありえない組合せと言ってもいいでしょう。日本の世俗的な楽器と西洋の教会の楽器では、接点がまるでありません。しかし、オルガニストの石丸由佳さんは、津軽三味線の音色にクラヴィコードやチェンバロといった古楽器との共通性を感じるといいます。そこで選ばれたのがヴィヴァルディ~バッハのオルガン協奏曲。ヴィヴァルディの2つのヴァイオリンのための協奏曲op.3-8をバッハがオルガン独奏用に編曲したものを、さらに津軽三味線とオルガン用に再編曲しています。さらにディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」では、重厚なオルガンの響きにシャープな津軽三味線の音色が加わって、独特の効果が生まれていました。
3組目はエリック・ミヤシロさんのトランペットと中川英二郎さんのトロンボーンという強力デュオによる「ティアーズ・イン・ヘヴン」。トランペットとトロンボーンの共演はごく一般的なことですが、このふたつの楽器のみのデュオはかなり珍しいと思います。エリックさんは複数の楽器を持ち替えながらの演奏。とりわけフリューゲルホルンのまろやかでニュアンスに富んだ音色が印象に残りました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)