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中村紘子の音楽会

投稿日:2016年08月21日 09:30

今年7月26日、日本を代表するピアニスト、中村紘子さんがお亡くなりになりました。その業績はあまりに大きく、とても一言では振り返ることができませんが、ピアニストとして、文筆家として、教育者として、すべてにおいて並外れた存在だったことはまちがいありません。
 番組内でもご紹介しましたが、1960年にNHK交響楽団が世界一周演奏旅行を敢行したときに、ソリストとして参加したのが当時16歳の中村紘子さんでした。現代でも次々と若い才能があらわれていますが、16歳でこれほどの大役を務めるピアニストなど、想像もつきません。1965年にはショパン国際ピアノ・コンクールで入賞を果たします。そのときの優勝者はあのマルタ・アルゲリッチ。コンクールの水準の高さが察せられます。
 アメリカの著名な音楽評論家ハロルド・C・ショーンバーグに『ピアノ音楽の巨匠たち』という名著があります。古今の大ピアニストたちの系譜をたどる大著ですが、この本に唯一登場する日本人が中村紘子さん。戦後、アジアから多くのピアニストが台頭するが、その多くは技術はあっても音楽との真の一体感に欠けると指摘した後、「西欧の音楽家に感銘を与えた数少ないアジア人ピアニスト」として、中村紘子さんの名前が挙げられています。「見事なテクニックとあふれる情熱がある」という賛辞は、本日お聴きいただいたベートーヴェンの「皇帝」にも当てはまるのではないでしょうか。
 個人的に忘れられないのは、もう何年も前に中村さんのご自宅にインタビュー取材に伺った際に聞いた「演奏会は一期一会」というお話。全国各地でたくさんのリサイタルをすると、うまくいくときもあれば、そうではないこともある。しかし、音楽家にとって演奏会は数あるうちのひとつであっても、お客様にとってはその一回がすべて。だから一回一回のためにしっかり準備をして、全力を尽くさなければならない。そう、おっしゃるのです。
 これほどの大家であっても、どんな公演にも覚悟を持って臨んでいるのだと知り、強い感銘を受けました。

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コメント

2004年のトロンボーンが上手

改めて中村紘子さんの偉大さが感じられた音楽会でした。ありがとうございます。30分の枠ではありましたが、また過去放送の貴重な映像を放送して下さいませ。

日本を代表するピアニストの中村紘子さんの突然の訃報にはびっくりしました。常に全力で音楽に向かいさまざまな方面で活躍されたお姿はずっと我々から消えないと思います。

皇帝も堂々としたまさに魂の入ったすばらしい演奏でした。
これからお姿を拝見できないと思うととても残念でしかたありません。が、女性としてもとても素敵な方でしたので見習って生きていきたいと思います。

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