今週はウィーン少年合唱団のみなさんをお招きしました。その清澄な声はまさしく「天使の歌声」。少年合唱団ならではの透き通った清らかな声がすばらしかったですね。
ウィーン少年合唱団のはじまりは、1498年に神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世が創設した宮廷礼拝堂の少年聖歌隊まで遡ります。なんと、500年を超える歴史があるとは。かつてはウィーン生まれの大作曲家シューベルトもこの合唱団に所属していました。
現在は9歳から14歳の約90人が所属し、モーツァルト組、ハイドン組、シューベルト組、ブルックナー組というオーストリアの作曲家たちの名前がついた4つの組に分かれています。合唱団全体では毎年約300回ものコンサートを開催しており、4つの組が交替で演奏旅行に出かける仕組みになっています。今回出演してくれたのはモーツァルト組。モーツァルト組には日本人の団員が2名いましたが、ほかにもいろいろな国からやってきた団員がいて国際色豊か。昔のイメージとはずいぶん変わり、すっかり多国籍化が進んでいます。もっとも、子どもたちが話すのはドイツ語。国外からやってきた子どもたちはみんな寮生活を通して、身につけて行くのでしょう。歌とドイツ語を学んだ経験は、きっと卒団後も大いに役立つにちがいありません。
卒団生は音楽の道に進む子もいれば、まったく違う分野で活躍する子もいて、さまざま。歌手ではカウンターテナーのマックス・エマヌエル・ツェンチッチがウィーン少年合唱団の出身。ウィーン・フィルのダニエル・フロシャウアー楽団長もこの合唱団の出身です。
カペルマイスター(指揮者)のマヌエル・フーバーさんが、すごく日本語を上手に話すのでびっくりしましたが、フーバーさんが教えてくれたウィーン少年合唱団のモットーは「歌う人は幸せな生活を送れ、人を幸せにすることもできる」。これはとてもすてきな言葉だと思いました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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