今週は先週に引き続きまして、番組放送60周年を記念したプロジェクト「未来オーケストラ」の全体リハーサルの模様をお届けしました。指揮は世界の第一線で活躍する山田和樹さん。練習の間、次々と金言が飛び出してきて、まったく目が離せません。
ドヴォルザークの「新世界より」の部分で山田さんが言っていたのは「自分の音を聴くことはすごく大事」。山田さんの指導で、トランペットの音がだんだんまろやかで伸びのある音に変わってゆきます。音のイメージを食べ物で表現する場面もおもしろかったですよね。ふつう、音楽を食べ物で表現する機会はあまりないと思うのですが、子どもたちからは、うどん、ドリア、肉など、いろいろな食べ物が挙がりました。山田さんのイメージはアボカド。石丸さんからは「アボカドをイメージして弾くと、音が粘っこくなった」という解説がありました。とろりとしてホクホクした食感のイメージが子どもたちに伝わったようです。
第1ヴァイオリンに向かって「ひとりひとりがもっと個性を出して」と指導する場面も印象的でした。大勢で一緒に演奏するのですから、一見、みんなが同じように弾くことを要求しそうなものですが、そうじゃないんですね。目標は「自分にしか出せない音を出す」こと。指導の結果、パッと上を向いたような音が出てきました。
プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の部分では、山田さんはこの音楽がモンタギュー家とキャピュレット家の対立を表現したものであることを伝え、戦っている雰囲気を出してほしいと求めます。一気に音楽に命が吹き込まれました。
「ウィリアム・テル」の部分の練習では、生きるヒントにまで話が及びます。「先回りできる人になったらすごい」。それが思いやりとつながっているのであり、人生がうまくいくと言います。子どもたちだけにとどまらず、大人にとっても学びの多いリハーサルだったと思います。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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コメント
たまたま見たのですが、とても良かったです。再放送があれば、子供に見せたいと探したけどなくて残念