今週は葉加瀬太郎さんがピアノの西村由紀江さん、チェロの柏木広樹さんとともに結成したピアノトリオ NH&K TRIO の演奏をお届けしました。「情熱大陸」のような聴きなれた曲でも、ピアノトリオで聴くとまた違った新鮮な味わいがありますよね。
葉加瀬さんから「室内楽という言葉にとても惹かれている」というお話がありましたが、室内楽の分野では、ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるピアノトリオは基本編成のひとつ。モーツァルトやベートーヴェンの時代から数々の名曲がピアノトリオのために作曲されています。同じく代表的な室内楽の基本編成に弦楽四重奏がありますが、多くの弦楽四重奏団が固定メンバーによる常設楽団として活動しているのに対して、ピアノトリオはもっとフレキシブル。かつてピアノのルービンシュタイン、ヴァイオリンのハイフェッツ、チェロのフォイアマンといったスター奏者からなるピアノトリオが「100万ドルトリオ」と呼ばれて絶大な人気を誇ったように、個性の強いソリスト同士が集まっても成立するのがピアノトリオだと思います。
今回は3人それぞれが作曲した楽曲をピアノトリオで演奏することで、気心の知れたメンバー同士ならではの親密な雰囲気が醸し出されていました。
西村由紀江さん作曲の「ビタミン」はまっすぐで爽やかな一曲。新年度を迎える今の時期にぴったりの前向きになれる音楽でした。
柏木広樹さん作曲の「羽根屋」には、どこか懐かしさを感じさせるところがあります。旧知の仲間同士のリラックスした音の対話といった趣。
葉加瀬太郎さんの「エトピリカ」では、3人の演奏から豊かな詩情が紡ぎ出されていました。ピアノトリオで聴くことで、一段と成熟した音楽として楽しめたのではないでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)