楽器製作の世界では意外なところで国産品が活躍しています。日本の職人技が国際的に高く評価されていることもしばしば。今週はそんな世界に誇る国産楽器をご紹介いたしました。
多久潤一朗さんがおすすめしてくれたのは、村松フルート製作所のゴールド製フルート。清澄な音はもちろんのこと、造形の美しさにも魅了されてしまいます。フルートの世界で「ムラマツ」はだれもが知る有名な存在です。所在地は埼玉県所沢市。創業は大正12年で来年100周年を迎えます。ずいぶんと長い歴史があるんですね。陸軍の軍楽隊に所属していた創業者の村松孝一さんが、当時日本では入手困難なフルートを作りたいと考えたのがはじまりといいますから、隔世の感があります。今や世界各国の一流オーケストラの奏者たちがムラマツのフルートを愛用しています。
最上峰行さんのおすすめは美ら音工房ヨーゼフのオーボエ。モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」で、その美音を堪能させてくれました。愁いを含んだ甘美な音色がたまりません。こちらも世界的なプレーヤーに愛用される楽器です。所在地は沖縄県南城市。創業者の仲村幸夫さんはドイツでオーボエ奏者としてキャリアを積んだ後、帰国してオーボエの製作をはじめました。そんなヨーゼフの楽器を「神の楽器」と称えたのがドイツの名奏者マンフレート・クレメント。クレメントはドイツのトップ・オーケストラのひとつ、バイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者を務めた世界的な名手です。
真矢さんのおすすめは世界的ドラムメーカーのPearl。所在地は千葉県八千代市。てっきり海外のメーカーだと思い込んでいましたが、それだけ世界の一流プレーヤーが使っている場面を目にする機会が多いということなのでしょう。最初は譜面台のメーカーだったというお話にもびっくり。奏者が楽器製作者になったわけではないんですね。「真円度がものすごく高い」というお話にメーカーの職人魂を感じました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)