今週はこれからの躍進が期待される番組注目の若手アーティスト2名をご紹介いたしました。
ピアニストの北村明日人さんは、今年8月に開催された第46回ピティナ・ピアノコンペティションの特級グランプリに輝いた新星です。このコンペティションでは、2019年の亀井聖矢さん、2018年の角野隼斗さん、2011年の阪田知樹さんなど、現在大活躍中のピアニストたちが特級グランプリを受賞しています。
北村さんが最初に演奏したのはバッハのフランス組曲第5番より第7曲「ジーグ」。ジーグとはバロック音楽時代の組曲を構成する基本の舞曲ですが、まさに北村さんの演奏は踊るかのよう。まるで指揮をしているような身振り手振りが印象的でしたね。
続いて演奏されたのはブラームスの幻想曲集作品116より第4番「間奏曲」。晩年のブラームスが書いたピアノのための小品です。この時期のブラームスの小品には孤独感や諦念を感じさせる作品が多く、どちらかといえばベテラン・ピアニストが好むレパートリーだと思いますが、若い北村さんは真正面から作品に向き合って、味わい深いブラームスを奏でてくれました。
トランペット奏者の松井秀太郎さんはクラシックとジャズを学び、作曲もできる多才の持ち主。小曽根真さんによる次世代を担う才能を発掘するプロジェクト”From OZONE till Dawn”のメンバーに選出されるなど、注目を集めています。自作の”Trust Me”を演奏してくれましたが、とても詩情豊かで、ポジティブなエネルギーにあふれていました。
小曽根さんとの共演では、チャイコフスキーの「白鳥の湖」より「ナポリの踊り」を演奏。トランペットが活躍する名曲として原曲も有名ですが、松井さんと小曽根さんの手にかかると、優雅なバレエ音楽が自由自在のジャズに変身。チャイコフスキーに聴かせてあげたくなるような楽しい演奏でしたね。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)