今週はクラシックの分野で活躍するアニメ好きの音楽家たち3名が集まって、それぞれが選んだアニメソングをスペシャルアレンジで演奏しました。みなさんのアニメへの熱い思いがひしひしと伝わってきました。
それにしても今の時代のアニソンには複雑な味わいを持った楽曲が多いことに改めて驚かされます。一曲目に演奏されたのは『王様ランキング』より「BOY」。演奏したい理由として、Cocomiさんが転調の多さや曲調の変化がストーリーに合っていることを挙げていました。ほのぼのとした絵柄に反して、物語世界が大人の心にも響くテーマを扱っていることを、あたかも音楽で予告しているかのよう。フルート、箏の透明感のある音色と、チェロとオーケストラの重厚な音色が組み合わさって、洗練されたサウンドが生み出されていました。
『進撃の巨人』の「The Rumbling」を選んだのは箏のLEOさん。選曲の理由は「デスボイス」にあると言います。大声で歪ませて叫ぶ低音域の声を「デスボイス」と呼ぶのだそうですが、一見、箏とは似合わない表現方法のように思えます。しかし、特殊奏法を駆使したLEOさんの演奏は迫力満点。恐怖や混乱までも伝えてくれるスケールの大きな音楽になっていました。カッコよかったですね。
『もののけ姫』より「アシタカとサン」を選んだのはCocomiさん。この物語のラストシーンには、変ニ長調の温かさが似合うと言います。フルートとハープの清澄な音色で始まって、ヴァイオリンのソロが加わり、弦楽器、さらに管楽器も加わって、次第に音の厚みが増してゆくという趣向を凝らした編曲でした。
宮田大さんは言葉のリズムに着目して『SPY×FAMILY』より「喜劇」を選んでくれました。宮田さんのチェロから言葉のニュアンスが感じられたのではないでしょうか。ストリングスを中心としたアレンジもシックで気持ちよかったですね。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)