ジャズ、ポップス、クラシック、どんなジャンルの音楽でも花形を務めるのがトランペット。今週はさまざまなジャンルで活躍するトランペット奏者のみなさんに集まっていただきました。当番組ではおなじみのエリック・ミヤシロさん、日本フィルのソロ・トランペット奏者のオッタビアーノ・クリストーフォリさん、東京吹奏楽団の守岡未央さん、バッハ・コレギウム・ジャパンで活躍するバロックトランペットの第一人者の斎藤秀範さんというそうそうたるメンバーが一堂に会しました。実に華やかな演奏でしたね。
一口にトランペットといっても、ピストントランペット、ロータリートランペット、コルネット、フリューゲルホルン、バロックトランペット等、ずいぶんたくさんの種類の楽器があります。冒頭の「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」の演奏に楽器ごとの特徴がよくあらわれていました。輝かしい音もまろやかな音も出せるのがトランペット。ミュート奏法の多彩さもこの楽器の特色でしょう。
トランペットは歴史の古い楽器です。古代より存在し、軍楽隊の楽器など実用的な役割を果たしていました。バロック音楽の時代になると純粋に合奏用の楽器としてトランペットが使われるようになります。この頃に使われていたのが、斎藤さんが演奏していたナチュラルトランペット。指でなにも操作せずに、口だけで音程を変えるというのですから驚きです。ただし、このままでは出せる音が限られていますので、19世紀初頭になるとバルブが発明され、トランペットの表現力は格段に高まりました。
バルブの方式によってピストン・トランペットとロータリー・トランペットがありますが、一般的に目にする機会が多いのはピストン。でもオーケストラではロータリーが使われることも珍しくありません。特にドイツ語圏のオーケストラではロータリーが一般的。オッタビアーノさんは曲によって使い分けると言っていましたね。オーケストラを聴くときは、どちらのトランペットを使っているのか、注目してみてはいかがでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)