今週は恒例となった高嶋ちさ子さんの「わがまま音楽会」。いま大人気の「高嶋ちさ子と12人のヴァイオリニスト」のコンサートを番組内で再現してお届けしました。パッヘルベルの「カノン」を筆頭に、だれもがどこかで耳にした名曲がぎっしり。「クラシックメドレー」では、5分弱でクラシックの超名曲が9曲も凝縮されていました。お客さんを楽しませるための工夫が随所に凝らされていました。
おもしろかったのはヴァイオリンの聴き比べのコーナー。ひとつは数億円もするイタリアの名器、ストラディヴァリウス。もうひとつはわずか数万円のヴァイオリン。AとB、どちらがストラディヴァリウスだったか、分かりましたか。
石丸さんと松尾さんで意見が見事に分かれてしまいましたが、これは簡単な問題ではないんですよね。AとBが「違う」ことはわかります。でも、どちらが「よい」かとなると、答えは自明ではありません。収録時には、AとBのどちらがストラディヴァリウスか、会場のみなさんに手を挙げてもらったのですが、ぱっと見たところでは五分五分に近い割れ方でした。
最初に聴いたAは艶やかで豊か、そして陰影に富んだ音色だったと思います。これに比べると、Bは硬質で、くっきりしたストレートな音が鳴っていたのではないでしょうか。Aのほうがニュアンスが豊かだけれど、でもBのほうが明瞭ですっきりしていて好きだ、という感じ方もまったくおかしくありません。そもそもヴァイオリンはだれが弾くかが肝心。高嶋さんの技術があったから、数万円のヴァイオリンが美しく鳴り響いたとも言えます。
最後の「天国と地獄」序曲は、通称「フレンチカンカン」として知られる名曲。振付までついて、華麗なショーになっていました。ヴァイオリンって、あんなに動きながらでも弾けるものなんですね。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)