今週はジャズ・ピアニストの山中千尋さんが、クラシックの名曲をひと味もふた味も違ったテイストにアレンジしてくれました。どれも予想外のアレンジばかりで、おもしろかったですよね。
「乙女の祈り」は原曲のサロン音楽的なムードが一掃されて、スリリングでエネルギッシュな曲に。19世紀の乙女が、21世紀の都会の女性に変身したかのよう。サン=サーンスの「白鳥」はまさかの五拍子に。すいすいと水面を泳ぐというよりは、活発自在に飛び回る白鳥の姿が目に浮かびます。
山中さんはビル・エヴァンスをモネ、セロニアス・モンクをピカソといったように、ジャズの巨匠を画家にたとえていました。これはわかりやすい説明では。ビル・エヴァンス風のシューベルトとか、セロニアス・モンク風のベートーヴェンとか、こんな弾き方ができるんですね。「エリーゼのために」はクール。ベートーヴェン本人が聴いたら、大喜びしてくれるかもしれません。
ジャズとクラシックには共通点もたくさんあります。例に挙げられていたのが協奏曲のカデンツァ。古典的な協奏曲では、よく第1楽章の終盤にソリストがオーケストラ抜きで独奏する見せ場としてカデンツァが用意されます。ここは自由に弾けばOK。本来、楽譜はありません。モーツァルトの時代には、もっぱらモーツァルト本人がピアノ協奏曲でソロを弾いていたので、アドリブで自由に弾けばよかったのです。このあたりはジャズっぽいですよね。でも、時代が進むにつれて、だんだんカデンツァはあらかじめ用意されるものに変質しました。作曲者本人が書くこともあれば、過去の大家が書いた楽譜を後世の演奏家が弾く場合もあります。
クラシックでは作曲と演奏の分業化がすっかり進んでしまいましたが、ときにはこんな遊び心にあふれたアレンジに浸ってみるのもよいもの。新鮮な感動がありました。
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クラシックの名曲を遊ぶ休日
投稿日:2018年11月03日 10:30
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