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箏の革命者をたどる休日~失われた音を求めて~

投稿日:2025年01月04日 10:30

 あけましておめでとうございます。今週はLEOさんとともに、筑紫箏を巡る旅へと出かけました。
 現在の箏の起源をたどると安土桃山時代に九州北部で始まった筑紫筝にたどり着くといいます。筑紫筝曲の創始者は北九州の善導寺の僧侶、賢順。賢順は幼少時に善導寺で善導寺楽を通して筝と出会いました。賢順の弟子であった法水は、江戸で八橋検校に出会います。もともと三味線の名手として名を馳せていた八橋検校は、法水から筑紫箏を学んで箏に転向し、芸術音楽としての近世箏曲を確立するに至りました。
 佐賀県多久市の郷土資料館でLEOさんたちが目にしたのは、450年前の筑紫筝。そんなに昔の楽器なのに保存状態は意外と良いようですね。全面漆塗りで、美術品としての価値も感じさせる点は、西洋音楽の楽器と似ています。それにしても16世紀後半に製作された楽器が現存しているのはすごいことではないでしょうか。よくヴァイオリンの名器として、イタリアのストラディヴァリウスが挙げられますが、ストラディヴァリウスは17世紀後半から18世紀初めに製作されていますので、筑紫筝はさらに古い時代の楽器ということになります。
 残念ながらオリジナルの楽器を鳴らすことはできませんが、筑紫筝曲研究の第一人者、宮崎まゆみ先生のご協力により、復元楽器の筑紫筝をLEOさんに弾いてもらうことができました。「だいぶ小さくて、かわいらしい」と話すLEOさん。弾き方もずいぶん異なるようです。LEOさんが復元楽器で演奏してくれたのは「小倉の曲」。芯があって深みのある音色が印象的でした。グリッサンドにも味わいを感じます。
 さらにLEOさんは筑紫筝と二十五弦筝を用いて、旅から得たインスピレーションをもとに作った「常若」を演奏。幽玄な筑紫筝ときらびやかな二十五弦筝を組合せて、幻想的な世界を描き出していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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