今週はスタジオにU-zhaanさんと石若駿さんのおふたりの打楽器奏者をお招きしました。インドの打楽器タブラと、西洋楽器のドラム。同じ打楽器といっても、それぞれまったく違った世界が広がっていることに驚かされます。
タブラはほとんどの日本人にとってなじみの薄い楽器だと思いますが、思いのほか澄んだ音の美しさが印象的でした。龍さんが試しに叩いてみても音がしっかり鳴らなかったように、まず芯のある音を出すのが難しそうです。
U-zhaanさんの、タブラには楽譜がないというお話もおもしろかったですね。それぞれの音に呼び方があって、それを師から弟子へと伝える。しかも複数の音をひとつの呼び方であらわすこともある。そんな独自の体系をマスターしなければいけないというのですから、なるほど、これは習得困難な楽器だと納得できます。
一方、石若駿さんは若くしてジャズ・ドラマーとして才能を見出されながらも、東京芸大でクラシック音楽の伝統的な教育を受けたという逸材です。ジャンルの壁など軽々と超えてしまう大器として、注目を集めています。
そんな石若駿さんがビブラフォンを演奏してU-zhaanさんと共演したのが、マイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」。作曲はTOTOのオリジナル・メンバー、スティーヴ・ポーカロ。これは名曲ですね。マイケル・ジャクソンの原曲では、歌詞で歌われる「都会の喧騒のなかで味わう孤独」といった気分が寂しげな曲想ににじみ出ていますが、このタブラ&ビブラフォン・バージョンでは、空が白んで夜明けを迎えるような雰囲気が加えて感じられました。タブラとビブラフォンの音色が独特の浮遊感を醸し出していたのもよかったですよね。
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リズムを楽しむ音楽家たち
ジャンルを超えた音楽家たち
アルバム「SPARK」がこの4月に全米ビルボード・ジャズ・チャート第1位に輝いた上原ひろみさん。日本人がアメリカでジャズのチャートのトップに立つという快挙を成し遂げました。そんな上原ひろみさんが、新日本フィルのコンサートマスターである西江辰郎さんとご縁があったとは意外でした。おふたりは昨年のクリスマス・コンサート「上原ひろみwith新日本フィル」で、上原さんのオリジナル曲をオーケストラアレンジで共演した間柄なのだとか。
上原さんがパッヘルベルの「カノン」を例に、クラシックとジャズの比較をしてくれたのが、とてもおもしろかったですよね。クラシックは楽譜に書かれている通りに弾く。でもジャズは即興(アドリブ)によってメロディを自由に変化させる。両ジャンルの違いが端的に示されていました。
でも、実はクラシックもかつては即興演奏がごく一般的に行われていました。龍さんのお話にも少しありましたが、モーツァルトが生きていた時代には、お客さんはモーツァルトの自作と同様に、モーツァルトの即興演奏を楽しみにしていたのです。その場で与えられたメロディをもとに、音楽家が自在に即興するという、現在のジャズのようなことがごく普通に行われていました。
それが時代を下るとともに、即興的な要素は失われ、作曲家があらかじめ考え抜いた音をその通りに演奏することが尊重されるようになっていきました。たとえば協奏曲にはカデンツァという独奏者の自由に任されている部分があります。これはかつては独奏者が即興を披露する(まさに上原さんが弾いてくれたように)聴かせどころだったのですが、やがて作曲者が事前にカデンツァも用意するようになりました。
なぜそうなったのか、一言では説明できそうにありませんが、音楽の姿は時代とともに変わっていくもの。ジャズもまたこれからどんどん変化していくはずです。そして、音楽のジャンルというものは、常に流動的なものなのでしょう。
オーケストラで高揚する音楽会
DJとオーケストラ。ぜんぜん別世界のもののようでいて、実は親和性は高いのかもしれません。今週の「オーケストラで高揚する音楽会」では、ジェフ・ミルズがDJとオーケストラのコラボレーションを披露してくれました。オーケストラの重厚なサウンドをまとったジェフ・ミルズの楽曲が、新鮮な躍動感を生み出していました。
オーケストラの演奏中にDJがなにをしているのか、一見、わかりづらいかもしれませんが、龍さんの解説にもあったように、これもライブ・パフォーマンスであり「演奏」だったんですね。一種の即興演奏のようなものと理解すればよいのでしょうか。
ビートが生み出す陶酔感は、クラシックの名曲にも共通する音楽の本質的な魅力だと思います。ハチャトゥリアンの「剣の舞」はまさにその好例でしょう。この曲はバレエ「ガイーヌ」の一場面のために書かれた音楽ですが、強烈なリズムは、いかにも民族舞曲風に聞こえます。民族衣装をまとった剣士が情熱的に踊る様子が目に浮かんでくるかのよう。
「剣の舞」には、バレエ初演の前日に大急ぎで書きあげられたという逸話が残っています。急遽舞曲が必要になったのですぐに一曲書いてくれと頼まれたハチャトゥリアンは、机をいろいろなリズムで叩きながら、なにか剣舞にふさわしい新しいリズムはないかと考えます。これというリズムが思いつかず夜通し悩み続けたところ、ようやく明け方近くになって「剣の舞」のリズムを考え出して、「これだ!」と一気に曲を書きあげたといいます。考えに考え抜いて作り出したリズムが、あたかも古くからの民族舞曲のように聞こえるというのがおもしろいところ。
ひとたび「剣の舞」を聴くと曲が耳にこびりついて離れないのですが、ジェフ・ミルズの The Bells も同じように頭に残りませんか。中毒性があるといいますか、クセになるといいますか……。この両者、やはりどこかでつながっているのかも。
第26回出光音楽賞受賞者ガラコンサート
将来有望な若手音楽家を表彰する出光音楽賞の受賞者ガラコンサートが今年も開催されました。第26回出光音楽賞の受賞者は、川瀬賢太郎さん(指揮)、山根一仁さん(ヴァイオリン)、薮田翔一さん(作曲)の3名。将来を嘱望される若き実力者たちがそろいました。
指揮の川瀬賢太郎さんは1984年生まれ。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めています。経験が求められる指揮者の世界で、若くして常任指揮者のような要職を務めるのは容易なことではありません。「神奈川フィルの顔」としてオーケストラを率いつつ、各地のオーケストラにも客演して、目覚ましい活躍をくりひろげています。本日のシューマンの交響曲第3番「ライン」では、横浜シンフォニエッタとともに、雄大な情景が目に浮かぶかのような見事な演奏を披露してくれました。
ヴァイオリンの山根一仁さんは1995年生まれ。まだ本当にお若いのですが、すでにリサイタルや協奏曲などで、たびたびすばらしい演奏を聴かせてくれています。なんといってもその魅力は切れ味が鋭く、思い切りのよい表現、そして鮮やかな技巧。ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番のフィナーレには鳥肌が立ちました。山根さんはこの曲が「幼稚園の頃から大好きだった」というのですから驚きます。モーツァルトやチャイコフスキーならともかく、3歳にしてショスタコーヴィチで踊っていたとは。そして、9歳で「題名のない音楽会」に出演していた映像が残っているのにもびっくり。長髪でかわいらしい少年だったんですね。
作曲の薮田翔一さんは昨年、ジュネーヴ国際音楽コンクール作曲部門で優勝を果たして話題を呼びました。コンクール受賞作のBillowは先鋭な作風で書かれた弦楽四重奏のための作品だったのに対して、本日の「風神雷神」はぐっとドラマティックで、大作映画に用いられてもおかしくないようなスケールの大きな作品でした。作曲にあたっては「どのような場所で、だれに向けた音楽なのかをよく考える」とおっしゃっていたのが印象的です。大きな可能性が広がっているのを感じます。