吹奏楽部も強豪校やマンモス校ともなれば部員が100人を超える大所帯も珍しくはないでしょう。しかし世は少子化。なかには年々生徒数が減り続け、部員の確保に苦労するといった学校もあるのではないでしょうか。
だったら少人数であることをむしろ強みに変えるような作戦があるのでは? 本日の「吹奏楽部を知る音楽会Ⅲ」では、サクソフォン奏者の上野耕平さんとこぱんだウインドオーケストラのみなさんが、そんな小編成吹奏楽の奥義を教えてくれました。
上野さん、本当にアイディアが豊かですよね。なるほど、こんな手があったのかと、思わず膝を打ってしまいます。
特にいいなと思ったのは、編成を絞った「華麗なる舞曲」。吹奏楽の難曲として知られる作品ですが、軽快で歯切れよい演奏は新鮮でした。単に少人数で演奏効果を出すということ以上に、演奏のクォリティ自体を高めることにつながっていたように思います。
吹奏楽に限らずオーケストラでもそうですが、一般に編成が大きくなればなるほど、迫力が増す代わりに、細かい音の動きをピタッと合わせることが難しくなり、音の輪郭はぼやけてきます。小編成だから可能な小気味よさ、機動力、メンバー間の親密な音の対話というものがあるはず。そもそも曲によっては、あまり大きな編成にしないほうが、作品が生きてくる場合も多いんじゃないかな、とも感じます。
最後の「ハッピー」はカッコよかったですよね。譜面台をなくすということは暗譜が必須になりますが、視覚的な効果は絶大です。客席のノリが確実に違ってくるのではないでしょうか。
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吹奏楽部を知る音楽会Ⅲ
特殊筋肉と音楽家たち
今回の「題名のない音楽会」は「特殊筋肉と音楽家たち」。番組タイトルを見て「特殊筋肉」ってなんのことだろうと思った方も多かったのでは。
ピアニストの反田恭平さんが見せてくれた、ラフマニノフ筋、ショパン筋、ベートーヴェン筋……。これは反田さんの命名で、本当にそんな名前の筋肉があるわけではありませんが、音楽家にはアスリートのような一面があることに気づかされました。
反田さんが弾いてくれた、ビゼー作曲、ホロヴィッツ編曲の「カルメン幻想曲」、すさまじかったですよね。華麗なテクニックが存分に発揮されていました。編曲者のホロヴィッツは、20世紀を代表する伝説的な大ピアニストです。しばしばリサイタルのアンコールでこの曲を披露して、聴衆を熱狂させました。ビゼーのオペラ「カルメン」に登場する親しみやすいメロディが、超絶技巧によってこれでもかというくらい華やかに変奏されています。
実は反田さんが弾いていたピアノは、そのホロヴィッツが愛用していたというニューヨーク・スタインウェイの名器。ホロヴィッツは独特のきらびやかなタッチを実現するために、楽器には強いこだわりを持っていました。ホロヴィッツのピアノの鍵盤は非常に軽かったことで知られています。軽いということは、わずかなタッチの差に敏感に反応してしまい、それだけコントロールが難しいということ。反田さんは精妙なタッチでホロヴィッツのピアノを操り、ホロヴィッツその人を思わせるような輝かしい音色を生み出していました。
上野耕平さんが見せてくれた「循環呼吸」にも驚きました。ストローとコップで実演してくれましたが、その気になればいつまででも息を吐き続けることができそうな余裕っぷり。頬にためた空気を出すのと同時に、鼻から空気を吸い込むんだそうですが、試しにストローとコップでやってみても、どうにもできそうにありません。
五嶋龍さん、循環呼吸が少しできていましたよね? これにもびっくり。ヴァイオリニストなのに、いったいいつ練習したんでしょう……。